義家弘介元文科政務官「沖縄を教育特区に」

名護市で教育講演会、教職員・PTAなど400人が参加

 日米両政府が普天間飛行場(宜野湾市)の代替施設の受け入れ先として合意している沖縄県名護市で3月29日、教育講演会(同実行委員会主催)が行われ、校長、教職員、PTAなど約400人が参加した。ここ数年、学力調査で県平均より低い名護市から教育再生の一歩を踏み出してほしいという願いから、「ヤンキー先生」として知られる義家弘介衆院議員が講師として招かれた。(那覇支局・豊田 剛)

グローバル人材の育成を/脱ゆとり教育の成果指摘

義家弘介元文科政務官「沖縄を教育特区に」

「日本の誇りと沖縄」と題して講演する義家弘介氏=3月29日、名護市の名護出雲殿ホール

 元文部科学政務官の義家氏は「日本の誇りと沖縄」と題して講演。「日本の誇りは沖縄である。先の大戦では沖縄は日本を守るため、そして本土では沖縄を守るために一丸となって戦ったという事実が、今日の平和の礎となっている」と述べた。

 ところが、誇りであるべきことが戦後、マスコミ報道などにより歪曲(わいきょく)され、「本来、共有すべき思いがぐちゃぐちゃになった」と嘆いた。その上で、歴史で光が当たらない部分をしっかり検証し、「二度と惨禍が繰り返されないように未来志向で考える必要がある」と訴えた。

 平和については「戦争をしたいと思っている人は日本にいない。世界平和にどのように貢献するか、平和を守るために何をすべきか」と問いかけて、「憲法9条が平和を守ってくれるのではない」「敗戦国である日本が置かれた現状を正確に理解しなければならない」と力説した。

 「教壇に立ち続けることがアイデンティティー」という義家氏は、学力の問題は教師でもある自分自身の問題として捉えているという。教師に必要なものは「圧倒的な授業力」であるとし、学力低下やいじめ、学級崩壊などの諸問題は教師の責任が問われている、と訴えた。

 教育再生の処方箋については、「初等教育がすべて。小学校のうちにしっかりしない限り、中学校になって学力を立て直すことは不可能」「考え、選択することは基礎がなければならない。少ない材料で考えれば愚かな考えしか出てこない。たくさんの材料の中から羅針盤を手にし物事を選択し作り上げていくことが大切」と強調した。

 ゆとり教育の結果、以前よりも知識が少ない人が社会に出ても路頭に迷うようになったと分析する義家氏は「7年前にゆとり教育の撤回を明言。教科書の量を増やし、その結果、学力の国際比較で世界トップに返り咲いた」と、脱ゆとり教育の成果を指摘した。

 さらに、「いい子というのは大人にとって都合のいい子なだけで、社会に通用しない。教育に必要なのは転ばせる(失敗から学ぶ)こと。たくましさが必要」と持論を展開した。

 沖縄の基地問題については、「いまはグローバル化で国際教育が必要な時代。米軍施設の中にアメリカの教育施設がある。沖縄を教育の特区として(沖縄県と米軍基地内の施設の)相互で教育できるようにすべきだ」と提案。沖縄、そして、日本のアイデンティティー・誇りを世界に発信できるのがグローバル人材だと強調した。

 質疑応答で八重山教科書問題について問われると、義家氏は「県教委と竹富町教委は教科書無償措置法に基づいて正しく判断してほしい」と語った。昨年3月、町教育員会を直接指導した時、「竹富町教育委員会内に入り込んでいた市民活動家がプラカードを掲げ、声明文を読み上げたことに驚いた。感情に訴えれば、違法状態も正当化されるといった考えは理解に苦しむ」と、町教委の対応を批判した。

 講演に先立ち、主催者を代表して島袋吉和・前名護市長が、名護市の学力は県内でも最下位レベルという現状を憂慮し、「学力向上に加え、青少年に希望と誇りを持たせる教育を期待したい」と述べた。また、国歌斉唱が適切に行われていない現状を受け、「国歌はいずれの学年においても指導してもらいたい」と訴えた。

 講演会では、岸本直也市議が名護市教育の現状を報告した。

 平成25年度の全国学力・学習状況調査結果(全国学力テスト)で、名護市の小学6年生の国語A(基礎)の正答率は52・2%で、全国平均より10・5ポイント、県平均より6・1ポイント低いという結果が出た。中学3年生の数学B(応用)の正答率は26・4%で、全国平均より15・1ポイントも低かった。

 こうしたデータをもとに、岸本議員は「学力向上のために何をしなければならないのか考える必要がある」と訴えた。