マンション住人の危機管理、信頼関係の構築を
住人の高齢化が進む古いマンションでは認知症の配偶者を介護する老老介護や高齢者の孤立が問題となっている。災害大国にあって、つながりがない、隣の住人の顔が見えないというのは最大のリスクである。ところが、個人を特定されたくない、あるいは防犯上の理由なのか、集合住宅には表札に名前なしの家も多い。人への無関心、不信感が強いということなのだろう。
わがマンションでは2年前に2人暮らしの高齢者世帯で火事騒ぎが起きてから、同じ階段を使う住人6世帯が不定期な集まりをするようになった。先日の集まりでは、もし火災があったときにマンションの全世帯の火災報知器に連動するシステムを導入しようという話が持ち上がった。2年前の火事騒ぎを経験していないわが家は正直、そこまでお金を掛けて大掛かりな火災報知機システムを導入する必要があるのかと思った。
ところが、先週土曜の昼前、マンション扉の向かい側の住人からインターホン越しに「お鍋を焦がしてすみません」と詫(わ)びが入った。何だろうと急いで扉を開けると、辺りに焦げ臭い匂いがする。火災報知器が鳴ったらしいが、全く気付かなかった。
年明け、降雪に見舞われた時は深夜、雪かきに駆り出された。使用している駐車場の前後を各戸責任を持つという取り決めになっているらしく、高齢者世帯では近居の息子夫婦が雪かきに駆り出されていた。
コロナで家時間が増え、住人の日常生活を身近に感じるようになったのは大きな変化である。特に10年後の暮らしを想像し、危機管理を考えるようになったのはコロナのおかげである。
新年早々、高齢者の仲間入りをした。今は大丈夫でも火の消し忘れや鍵の閉め忘れなど、”ヒヤリハット”は間違いなく増える。危機管理として、いつでも「助けて」と言える信頼関係をつくる。面倒ではあるが、同じ階段を使う住人の集まりは大事にしていきたい。(光)