北秋田市の移住支援が充実、まずは1泊400円
秋田県北部の北秋田市が移住者を募集している。移住体験用の住居を設け、おためし移住やワーケーションを体験できる。移住者には引っ越し費用等の助成や、住まい・育児などの手厚い支援策を用意。移住者は年々増加傾向で、近年はクマなどの狩猟を生業(なりわい)とするマタギやローカル鉄道「秋田内陸縦貫鉄道(略称:秋田内陸線)」の運転士、農林業に就く人も出てきた。(伊東四朗)
交通の便よく観光地も多彩、移住体験用の住まいを訪問
北秋田市は県北の内陸部にあり、県内で2番目に面積が広い。秋田新幹線が止まる角館(かくのだて)から世界一の大太鼓がある鷹巣(たかのす)を結ぶ線上に位置する。2005年に鷹巣、合川(あいかわ)、森吉、阿仁の4町が合併して誕生した。大館能代空港があるほか、角館から鷹巣まで約94㌔を運行する秋田内陸線があり観光客でにぎわう。
しかしながら人口減少が止まらない。合併時は約4万人だったが20年は3万人強に。そこで市は総務部総合政策課内に「移住・定住支援室」を設けた。「おためし移住体験」用の住まいがあるというので、同室の松尾周(いたる)さんに案内してもらった。
場所は秋田内陸線の阿仁合(あにあい)駅近くで、駐車場付きの2棟。外観はそれなりだが、中はピカピカだ。
1棟はシェアハウス付き移住定住ネットワークセンターで、仕事と遊びを両立するワーケーション用も兼ね、2階には4部屋。1階は共用部分でキッチン、水洗トイレ、浴室、シャワールームなどがある。各室には寝具、エアコン、暖房器具、インターネット環境を完備し、衣類と身の回り品があれば宿泊もできる。もう1棟は2戸続きで、1戸はバリアフリー対応型であり高齢者や障害者も安心だ。
宿泊費は光熱費込みで1日400円!という驚きの安さ。交通費・滞在費は1世帯当たり最大5万円の助成がある。1泊2日から最大180日間まで滞在可能だ。
移住相談など窓口への問い合わせは年間約60件、移住者はここ5年間で約220人である。コロナが落ち着き最近は首都圏を中心に移住体験の申し込みが増加。ワーケーションやリモートワークといった2拠点居住者も対象だ。
手厚い支援策を用意、東京23区の家庭持ちに優遇措置も
ところで移住となると教育環境が気になる。市は学校への教育体験や、小中学生対象の寄宿舎付き「あきたリフレッシュ学園」で教育留学を実施。阿仁合小学校では国際結婚の2家族の子供が通学し、グローバルな環境にある。
子育て支援も手厚く、中学生までは医療費を全額助成(高校生は月額500円の自己負担)。出産時には「ハッピーアニバーサリー事業」で子育て用品など6万円分、就学前までは子育てクーポン券が毎年1万円支給される。
次に仕事だが、市内の一般会社員のほか、映像制作や画家、ジャムやお茶の販売など自営業を営む人もいる。農業、林業、建設業、鉄道業と職種は多様だ。
「住まい応援助成金」は、移住者への引っ越し費用等として最大20万円を支援。さらに 東京23区からの移住者限定で、市内の登録企業に就職した時は「移住支援金」として家庭持ちに100万円、単身者には60万円を支給する。
お金の話ばかり書き連ねてきたが、移住者はお互いに交流したり町案内やマタギ体験など地域を活性化させるイベントも実施し、仲間を募っている。
市ホームページからオンラインで農業、林業、自然体験等の移住体験メニューを視聴できる。12月30日には鷹巣で就職・Aターン相談会を開く(オンライン相談あり)。市ではワーケーションの進展を想定し鷹巣駅前のカフェ(HOLTO)と打当(うっとう)温泉マタギの湯に、無線LANの最新規格Wi-Fi6の通信環境を整備した。
同市は観光地も多く、ユネスコ世界文化遺産登録の伊勢堂岱(いせどうたい)遺跡、花と紅葉と樹氷が美しい森吉山、番楽とマタギの里で知られる根子(ねっこ)集落やスキー場、温泉、湖、滝、渓谷を含め自然に包まれている。阿仁合駅から秋田市までは冬期を除き車で約1時間半、また東北自動車道と高速道路で結ばれている。