体験で「科学する心」育てる

秋田大が「子どもものづくり教室」

 秋田大学の「ものづくり創造工学センター」(神谷修センター長)で、「第11回子どもものづくり教室―4足歩行ロボット」がこのほど開かれた。地域社会との連携・交流を図る事業の一環で、製作途中で悪戦苦闘する子供も多かったが、大学の先生や同大学のロボコン愛好会の学生らに教えてもらいながら、最後は全員が真っ直ぐスムーズに歩く四足歩行ロボットを完成できた。(伊藤志郎)

地域社会との連携・交流図る

事業の一環でほぼ毎月開催

体験で「科学する心」育てる

四足歩行ロボットを真っ直ぐ歩かせようと調整する子供=秋田大学のものづくり創造工学センター(写真は同センター提供)

 同センターは秋田大学大学院の工学資源学研究科に附属する施設で、その中の創造組立作業室で教室を開いた。同大学のウェブサイトやメーリングリストで知ったり、知人・友人などから聞いて応募した小学生26人と保護者25人の合計51人が参加した。

 ロボコン愛好会の学生が四足歩行ロボットの仕組みを説明。動力源であるモータの回転運動をどのように「歩く」という往復運動に変換するのか、自動車のワイパーやエンジン内の動きを簡略化した動画を使って子供にも理解できるように語った。各部品がどこに使われるのかを学んだあと、子供たちは一斉に作業に取り掛かった。

 最初の作業は、市販品のギヤボックスの組み立て。普段からプラモデルやミニカーなどの組み立てをしている子供の参加は少ない。グリスを塗る意味や、モータ軸に隙間を開けてギヤを付ける理由など、学生のお兄さんたちに教えてもらいながら熱心に作業していく。

 関係者の一人は「ロボットの足をナット・ネジで止める作業は比較的容易に行っているように見られたが、組み上がった機体を動かす際に、部品同士が接触して動けなかったり、左右どちらかの足を軸に回転して歩いてしまったりと苦労していた。それでも調整を続けながら、最後は全員が無事に真っ直ぐスムーズに歩く四足歩行ロボットを製作できました」と安心した様子だった。

 教室の最後には、同大学の「すもうロボットプロジェクト」から、実際に大会にも出場している本物のすもうロボットが紹介された。土俵の中のロボットを取り囲んだ子供たちの目が注がれる中、簡単な動かし方の説明を受けた子供たちは順番にすもうロボットの操縦体験を行った。

 教室が終わっても、子供たちは本物のすもうロボットに釘(くぎ)付け状態。大学の関係者は「大学生としてきちんと勉強すると、こんなにすごいロボットを作ることができると感じてもらえて良かった。子供たちの『ロボットを作ってみたい』という夢を一歩近く感じてもらえたと思います」と話していた。

 同センターは、ものづくり実践教育の推進と創造的なエンジニアの育成、そして科学技術を通じた地域社会への貢献という三つの目的を柱に、2004年7月に設立された。その中の「地域連携・広報部門」では、科学技術に関するセミナーや講演会を実施。一般市民や小中高生を対象とした「ものづくり体験セミナー」「子供科学教室」を開いており、子どもものづくり教室はその一つ。同教室は不定期に開催してきたが、2年前からほぼ毎月開催している。

 後日集計された会場でのアンケート結果によると、保護者は母親が多かったが、日曜日のためか父親も7人参加した。保護者の感想としては「とても楽しい内容だった。以前、タミヤの歩くカブトムシに挑戦してみたが、動かすことができませんでした。今回は大満足の様子でした」「本人が小さいので少し難しかったのですが、できるところは自分でやったので喜んでいた」とおおむね好評。「パソコンやプログラミングを使った子供向けの講座を実施してほしい」「綱渡りロボットやソーラーカーも行ってほしい」などの要望もあった。

 ものづくり教室では毎回、多彩なテーマを設定。第9回の「ぶんぶんゴマで電気をおこそう」では、コマに磁石を取り付けコイルのそばで回すことで電気を起こしLEDを光らせた。第7回「スパゲティタワーを建てよう」では、パスタ20本とホットボンド5本を使いタワーの頂点に5㌘の粘土を設置するという制限の中で、より高く頑丈なタワーの作成に挑んだ。

 これらは今回と同じ創造組立作業室で実施したが、第5回は屋外で実施した。毎年夏に秋田県能代市で開催されている能代宇宙イベントに合わせての開催で、子供たちはモデルロケットの打ち上げ体験を行った。イベントで行われた大学生による缶サット(空き缶サイズの模擬人工衛星)のカムバック競技会や全長2㍍のハイブリッドロケットの打ち上げなどを観察し、科学への興味を深めている。