「親権」と子供の幸福実現について考える


 最近、親の責任と子供の幸福について考えさせられることが二つあった。

 一つは、以前お世話になったベテラン小児科医のネット勉強会を視聴した時のこと。心に残ったのが「親権」についての話である。

 親権というと、夫婦が離婚する際に子供はどちらが引き取るか、ということでよく聞く言葉だが、この時の話は「18歳になると親権はなくなる」というものだった。

 民法が改正され、来年4月から成人年齢が18歳に引き下げられる。そのため法的に親権に服する必要がなくなり、銀行口座なども親ではなく本人が作ることが可能になるという。

 成人年齢が下がることはもちろん知っていたが、筆者にとっては自分の子供がその年齢に近いこともあって、大げさだが衝撃を受けた。自分事として考えておらず、親自身の「内外の準備」ができていないことに気付かされた。

 もう一つは、政府の教育再生実行会議が6月に発表した第12次提言の中で、「ウェルビーイング(well-being)」の実現がうたわれていたことである。

 ウェルビーイングは「肉体的にも、精神的にも、社会的にも、全てが満たされた状態にあること」(WHO)で、一言で言えば「幸福」な状態ということになる。

 子供一人ひとりの幸せと社会全体の幸せを実現するという方向にもちろん異論はない。ただ、筆者が今の社会を見て危うさを感じるのは、生まれてきた子供たちを大切にしようという風潮が薄れているのではないかということである。

 特に最近の同性婚や選択的夫婦別姓の議論では、本来最も重視すべきであるはずの「子供の福祉」について、本紙や一部の識者等以外に言及する意見が少ない。これは過度に「個人主義」を叫び、家族が果たす子育ての役割を軽視していることの表れではないか。

(誠)