保育現場で期待、顔が見える「透明マスク」


 口元や顔の表情が確認できる顔が見える”透明マスク”が売り出された。マウスシールドと違って、透明マスクは顔にフィットしていて飛沫(ひまつ)漏れが少ない上に、マスク部分の顔の80%を視認できる。口や顔の表情を読み取ることを必要とする視聴覚障碍者にとって待望のマスクとなる。

 開発のきっかけは、視聴覚障碍(しょうがい)のある女性社員からの一通の窮状メールを受けて開発に着手したという。透明マスクへの反響は大きく、視聴覚障碍者だけでなく言語教育や保育の現場からも問い合わせが殺到しているという。

 特に保育の現場からはコロナ自粛が取られた当初から、マスク装着による子供の発達への影響を懸念する声が多く上がっていた。言葉によるコミュニケーションが難しい小さな子供は、保育士の目や顔の表情、口の動きを通して保育士の気持ちを読み取っていく。

 自身も知人の保育士から、「子供の顔から笑顔が減った」「顔が無表情になってきた」「マスクを着けて抱いたら泣きだした」といった、子供の健康を心配する声をよく聞いた。

 日本小児科医会では早々に2歳未満児のマスク使用は不要とする見解を出したが、感染対策上、ほとんどの施設で保育士のマスク装着は励行されている。

 透明マスクへのニーズは高く、8月から保育現場にも届けられる予定だが、コスト面でどこまで広がるのか、今のところ不透明だ。家族省があるフランスはパンデミック当初から政府が透明マスクをいち早く保育現場に無料配布し、対処したと聞く。

 一方、日本のコロナ対策は後手後手の感は否めず、特に子供のための対策は抜け落ちているように思う。こども庁創設の議論が始まったことは喜ばしいことだが、この際、フランスやドイツのように子供を守れる大きな仕組みをじっくりと議論してほしいものだ。(光)