住民が手掛ける街づくりを見守りたい
家を出ると、川崎市と横浜市をまたいで長いケヤキ並木の道が続く。先日、そのケヤキの街路樹が横浜市側だけ伐採されていた。倒木の危険や落葉樹の清掃作業など、住民の生活や安全に支障が出てきたからだ。
郊外型ニュータウンとして開発されて50年。実家がある辺りも代替わりで、土地を売却し利便が良い駅近に移転する人も多く、ここ数年は空き地や空き家が目立つようになった。
高齢者世帯が転居し、そこに若い世代が来ない。何もしなければ老人の街になるのではないか。2年前、街の将来に危機感を持った有志が住民による街づくり倶楽部を立ち上げた。
小学校を中心に放射状に住宅が広がる街は坂が多い。散歩に出てもトイレ休憩やお茶飲みができない。隣人同士のつながりがない。車の免許を返上した高齢者は自宅に引きこもる生活になる。地域住民1500世帯の声を拾い上げ、若い世代に選んでもらえる魅力ある街づくりをしようというのである。
食のアトリエを主宰し、街づくりに関わる知人の話によると、ケヤキの伐採に際し、街路樹の専門家を招いて勉強会を重ね、市に住民提案をしているという。それだけではない。伐採したケヤキの木材を再利用したケヤキハウスの構想まで生まれている。縁側や工房、まちの書斎や保養所をつくって、遊び学び、カフェができる支え合いの街をつくろうというのだ。
プロ顔負けのユニークな街づくり提案ができるのも、建築家やデザイナー、都市開発のプロなど、人材がそろっているからだ。
筆者が住む川崎市側のケヤキ並木もいずれ伐採され、新しい街路樹に生まれ変わるのだろう。市境をまたいで広がる街は、高齢化の様相も課題も似通っている。20年後の自分たちの暮らし、環境がどう変わっていくのか。想像力を働かせながら、住民が手掛ける街づくりを見守りたい。
(光)