再浮上した少人数学級議論にエビデンスを


 8月25日の教育再生実行会議の議論を受け、政府は来年度から少人数学級を段階的に進める意向を示した。政府の試算によれば、今後10年で児童生徒数が約100万人減ることから、教員を5万人増やせば、現行の40人学級を30人学級にするのは十分可能だという。

 ただ近年、教員採用倍率の低下は著しい。教員採用試験の倍率は2000年度の13・3倍をピークに急落し、昨年度は4・9倍だ。小学校は3・2倍と低迷が続いている。労働力人口が減る中、教員志望の若者が増えるのかどうか。

 同様に霞が関の官僚志望も減っている。新政権の目玉となった河野太郎行革・規制改革担当大臣は9月17日、就任早々の記者会見で「霞が関の『ブラック』な状況をなんとか『ホワイト化』することを優先順位高くやっていかなければならない」と述べ、官僚志望が激減する霞が関の危機的状況を吐露した。

 不況になると公務員、教員志望が増える。今後、再び増える可能性がないわけではないが、やはり長時間勤務など、職場のブラック化の構造が改善されなければ質の良い人材が教育現場に集まる見込みはない。

 コロナ禍で再浮上した少人数学級議論だが、政府の実行会議の中で政策の効果を示す十分なエビデンスが示されたわけではない。少人数学級に関わる過去の議論では、2011年に小1プロブレムを理由に小学1年が40人学級から35人学級に縮小された。その後、財務省と文科省との間で政策効果をめぐって激しい攻防となったこともある。

 少人数の方が一人ひとりに目が行き届きやすいというのは教師の実感であろう。ただ30人学級になった場合、31人の場合は15人と16人の学級編成になる。子供の側から見ると目が行き届き過ぎるのも息苦しさやストレスを与えるものだ。

 見直し議論は大いに必要だが、エビデンスに基づいた議論を求めたい。(光)