生存率を高めるためには「エコー検査」を

東京都健康長寿医療センター・松川美保氏

「ここまでわかった! 高齢者がんの予防と治療」

 「ここまでわかった!高齢者がんの予防と治療」と題した老年学・老年医学公開講座(東京都健康長寿医療センター主催)が東京・王子の「北とぴあ」で開かれた。同センター内視鏡科・松川美保専門医長は、早期発見が難しく、根治するのが難しい膵癌(すいがん)だが、「早期発見・早期治療」という鉄則は変わらない。「疑いがあれば、まず、エコー検査から始めましょう」と訴えた。


根治が難しい膵がんでも、鉄則は「早期発見・早期治療」

生存率を高めるためには「エコー検査」を

東京都健康長寿医療センター内視鏡科・松川美保専門医長

 膵臓は胃の裏側に位置し、長さ20㌢、厚さ2㌢の細長い、おたまじゃし形をしている。胆嚢(たんのう)、胆管、横行結腸、脾臓(ひぞう)、十二指腸などに囲まれている。膵臓で生産された膵液が中心部の主膵管を通って、十二指腸に流れる。膵液は成人で1日に1~1・5㍑分泌され、糖質を分解するアミラーゼ、脂肪を分解するリパーゼ、タンパク質を分解するトリプシン・キモトリプシンを含んでいる。また、ランゲルハンス島の細胞は血糖値を下げるインスリン、血糖値を上げるグルカゴン、ホルモンの分泌を抑制するソマトスタチンなどが適切に働き、体内ホルモンのバランスを維持している。

 膵癌の主な症状は、腹痛32%、黄疸(おうだん)19%、背部痛、食欲低下、体重減少、全身倦怠(けんたい)感、糖尿病の悪化などが挙げられる。発症に関するリスクとして①親・兄弟に罹患者が1人いる場合4・5倍、2人の場合6・4倍、3人いると32倍になると言われている②糖尿病患者が膵癌になる可能性は1・94倍、急激な進行の場合に膵癌が発見される傾向がある③喫煙によるリスクは1・68倍、大量飲酒1・22倍、肥満も関与――とされている。

 膵癌の診断は①腫瘍マーカーは採血して検査する②超音波検査で診断できるのは7割程度、身体の負担が少なく、費用も安い早期発見に有用だが、皮下脂肪が厚い、腹部のガスが多いなど観察不良であるケースも③CT検査:造影剤を使ったCT検査の感度は95%、造影剤を使わない場合は6割程度になる。正確な膵癌の位置や血管との位置関係、転移検査に有効④ERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影検査)は黄疸がある場合、膵癌の胆管浸潤部を擦過し細胞診提出、生検し組織診提出可能。急性膵炎を起こすリスクも⑤EUS-FNA(超音波内視鏡下穿刺吸引法)は胃カメラから超音波を発して観察、針を刺し細胞や組織を吸引採取する。診断確率は92~100%――これらの検査結果を元に局所進展度、リンパ節転移、遠隔転移などを判断、ステージⅠ~Ⅳに分類される。

 膵癌が見つかった患者で、外科的手術可能な割合は約20%で、多くは手術困難な状態で診断される。周辺器官との関連が深く、切除後に残った臓器の再建もあり、非常に大掛かりな手術となるケースが多い。化学療法はさまざまな薬品・用法が研究開発されており、患者が耐え得る体力と強い副作用がない限り継続される。

 早期発見が困難なこと、進行が早いこと、再発しやすいことで、全症例における5年生存率は9・0%と非常に厳しい結果となっている。簡単で身体的・経済的に負担の少ないエコー検査を受けましょうと訴えた。