中学生の「1日スマホ60分」は非現実的?


 香川県議会が全国初となる「ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」の素案を発表した。今月10日、公開されるや否や、中学生は「1日スマホ60分、夜9時まで」といった、制限部分だけが切り取られ、「非現実的で実効性がない」「行政が口出しするのはおかしい」など、批判が議会に向けられた。

 しかし、国立病院機構久里浜医療センターが昨年11月に発表した10代、20代の男女対象の調査では、平日で18・3%、休日で37・8%の若者が3時間以上ゲームに費やしていた。1時間未満の場合は、学業や仕事への悪影響や心身の状態を害することはないが、3時間以上になると体の不調や睡眠障害などの心の問題が起きてもゲームをやり続けるなど、制御できなくなる人が増える。

 WHO(世界保健機関)が「ゲーム障害」を精神疾患に認定する前だが、調査を手掛けた久里浜医療センターの樋口進氏に話を伺ったことがある。子供は大人と違って、依存症になってからでは治療が極めて困難だと話していた。

 IT関係者の間ではよく知られた話だが、アップルの創業者のスティーブ・ジョブズは、子供にiPad(アイパッド)を使わせなかったし、ビル・ゲイツは14歳まで携帯を持たせなかった。彼らは、情報を判断する能力がない発達途上の子供が自由にネットに触れることの危険性を最もよく知っていたからである。

 ネット依存の怖さを日々感じているのは、子供を持つ保護者である。香川県が条例制定に着手したのも、もはや親だけでは子供を守れないという危機感からだ。子供が心身共に健やかに養育されるよう、保護者を支援する行政の責務として、ある意味、当然のことであろう。

 批判を受けて条例案は「1日ゲーム60分」に修正されたが、1日の利用時間の目安を示したのは、子供のネット依存の実態を知れば、決して不適切なものではない。

(光)