神奈川県相模原市緑区の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で…
作詞作曲活動も行うジャズ歌手の奥土居美可さんが「今は世界でテロ、銃撃戦、自然災害があり、一度に多数が亡くなってしまう。心の痛みが癒やされる間がない時代」と話した(25日付当欄)。再び、取り返しのつかない事が起きてしまった。
神奈川県相模原市緑区の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、入所者ら19人が刺殺され、26人が重軽傷を負った事件。男が車で乗り付け、施設の窓をハンマーで壊し侵入、次々と襲った。
「人を人として規定するものが言葉である」(和辻哲郎著『人間の学としての倫理学』)とすれば、問答無用で知的障害者を襲ったことの卑劣さは形容のしようがない。人間の所業とは思えない。
被害者たちは就寝中で、気付いても身体が不自由で、素早く逃げることもできず強い恐怖を感じたことは容易に想像がつく。ほとんどの人が首に切り傷があり、中には神経や骨に達する傷もあったから男はそれを狙ったのかもしれない。陰惨過ぎる。
施設のある相模原市は、都心から電車で1時間ほど。定員は160人、入所者はおよそ20人で一つの「ユニット」と呼ばれるグループに分かれ、食事や入浴をするなどの生活を送っていた。
「社会は主として『団結事をともにする』」(同)という。同じ屋根の下で生活をしながら育まれる障害者の夢や希望を根底から崩した男は、彼らをよく知る同施設の元職員であった。破壊に至る心の闇はあまりに深い。