【上昇気流】こな雪、つぶ雪、わた雪、ざらめ雪、みず雪、かた雪、春待つ氷雪


 こな雪、つぶ雪、わた雪、ざらめ雪、みず雪、かた雪、春待つ氷雪。太宰治が表現した津軽の七つの雪を、歌手の新沼謙治さんが歌っている。北国や日本海側で大雪が予想される元旦は、どんな雪が降るだろうか。

 明治35年に青森の陸軍連隊が雪中行軍の演習中に遭難し、210人のうち199人が凍死した「八甲田山事件」は1月のことだった。当時の軍幹部は厳冬と縁がない薩長出身が多く、精神論がまかり通った。

 日露戦争ではロシアの冬季攻勢にしばしば敗れた。厳寒期にナポレオン率いる大軍を撃破した伝統を持つロシア軍は、毛皮の外套(がいとう)や帽子、防寒靴で身構えていたが、日本軍は毛皮なしで、靴下まで凍らせた。

 本格的なスキー術が伝えられたのは明治44年。オーストリア陸軍のフォン・レルヒ少佐が新潟県に滞在中、陸軍第13師団を訪れスキー術を教えた。感動した師団長の長岡外史は、明治天皇に上奏している。

 「数千年来、雪に虐げられました陛下の赤子が、ようやく雪を征服するの時運に到着いたしました。それは『スキー』と申しますもので、その写真数葉を侍従武官長に差し出し、すでに天覧を賜った旨、拝承いたしました」(『将軍長岡外史』二見書房)。その写真を見ると、ステッキ1本で滑っている。

 映画「八甲田山」(1977年公開)では俳優、高倉健さんが演じる現実重視の将校らだけが生き残った。精神論では大雪から身を守れない。国もまた然(しか)りだろう。