リフレーミングとは
東京都写真美術館で沖縄出身の山城知佳子さんの作品展「リフレーミング」が開かれている。映像・写真を表現手段として使っている作家で、リフレーミングとは「物事を見ている枠組みを変えて見直すこと」である。
これは最新作の作品名で、カルスト地形で知られる沖縄・名護市を舞台に、過去と現在、山と海、地上と地下、人と人でないものをつなぐ寓話(ぐうわ)として、3人の主役を登場させて製作した作品。
枠組みを変えて見直すことは多くの作品に共通していて、歴史と風景の全体を身体感覚によって捉え直そうとする。映像作品である《あなたの声は私の喉を通った》(2009年)もその一つ。
作者は戦争の記憶を語った老人の言葉を文字に書き、自分の声で語ってみる。作者の語る映像に老人の映像を重ねて表現している。鑑賞ガイドに「作者は、おじいさんの記憶を継承することができたと思いますか?」とある。
見る人に考えさせる質問だ。答えるのは簡単ではない。作者自身が、当事者と聞き手の隔たりを超えることの困難さを味わってきたからだ。だが同じ方法を繰り返すうち、10回に1回だけ光景が浮かんで涙が出てきたという。
しかし、他者の痛みを経験したわけではない。仮想的経験で、語り終えると消えてしまったという。語り継ぐ身体を失った無数の声、それをいかに聴くことができるのか。海に山に、作者は心を開いて耳を傾ける。10月10日まで。