東京・千代田区の国立劇場小劇場で久しぶりに文楽公演を観(み)た。
東京・千代田区の国立劇場小劇場で久しぶりに文楽公演を観(み)た。5月公演は出演者に新型コロナウイルス感染者が出たため、千秋楽まで10日間ほどが休演となった。それだけに人の入り具合が気になったが、台風の接近で荒れ気味の天気にもかかわらず、ほぼ満席に近かった。
感染対策として、舞台正面の1列目と太夫、三味線の床のすぐ前は空席。通常2部制のプログラムも3部制にし、劇場滞在時間は休憩を挟んで2時間半ほどになっている。入場時の検温、退場の際は係員の誘導で少しずつ席を立つところなどは歌舞伎座と同じだ。
歌舞伎座の7月公演では、市川猿之助さんが「蜘蛛(くも)の絲宿直噺(いとおよづめばなし)」で六変化を演じるのを観たが、その直後に猿之助さんが新型コロナ陽性と判明し驚いた。
8月大歌舞伎でも「加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)」で六役早替わりを演じる予定だった猿之助さんは初日から休演し、坂東巳之助さんが代役を務めた。
猿之助さんは、保健所が指定する経過観察期間を経て20日には復帰している。観客や出演者のクラスターは発生しなかった。こういった経験は、ウィズコロナを模索する舞台公演の在り方として参考になるだろう。
さて久しぶりの文楽、第1部は「寿式三番叟(ことぶきしきさんばそう)」で始まった。新型コロナの疫病退散、厄払いの願いを込めての演目である。文楽ならではのユーモラスな三番叟の幕が引かれても、しばらく拍手が続いた。コロナ退散への観客の願いが込められているようだった。