月面での乗り物「有人与圧ローバ」が注目される。


野口聡一さん、ISSでの日常を動画発信80本

国際宇宙ステーション(ISS)日本実験棟「きぼう」で、ショパンの「別れの曲」を弾く野口聡一さん(野口さんのユーチューブより・時事)

 宇宙飛行士、野口聡一さんが宇宙開発などについてインタビューに答え、「時代の変わり目。これからいろいろな企業がそれぞれのやり方で宇宙を征服していく」と話している(小紙8月30日付)。

その中で特に宇宙への移動手段開発の可能性などに言及し、自身も力を尽くしたいとしている。野口さんは宇宙航空研究開発機構(JAXA)所属だが、二十数年前の「国威発揚」を前面に出したわが国の宇宙開発とはずいぶん様変わりして感慨深い。

その話の中にはないが、民間企業が携わった一例として、JAXAとトヨタ自動車が共同で研究開発している月面での乗り物「有人与圧ローバ」が注目される。

月面での有人探査活動でトータル1万㌔走行を目指し、2030年代前半の実用化を目指す。月面でも通用する車の技術は、翻って地球上での車の概念も変えるだろう。

もちろん、宇宙は経済活動だけの場ではない。多くの民間企業が関わった小惑星探査機「はやぶさ」の運航目的の一つは有史以来の関心事である生命の起源探しだ。今や経済や真理の追求に、宇宙から地球を見下ろす視点が国民一人一人にも求められる時代となった。

物理学者の村山斉さんの著書『宇宙になぜ我々が存在するのか』(講談社)に、人間が存在するのは「物質が反物質よりも数が多かった」からとある。宇宙や生命の神秘の探究を、科学の発展だけでなく、人類の精神性向上につなげていくことが21世紀の課題だ。