犬を飼う人、食べる人


地球だより

 ベトナムには犬を食べる文化が残っている。首都ハノイには、犬肉を販売したり食べたりする店舗が並ぶ通りもある。昔から、精力がつくとか悪運を取り除くとして珍重され、旧暦の月末に食べる習慣が残っているのだ。多分、犬食文化の源流は中国で、東では韓国などにも残っている。ベトナムで消費される犬は、年間500万匹に及ぶとの推計もある。

 その犬食が今、議論を呼んでいる。豊かになった国民がペットとして犬を飼うようになったことで、犬を家族として受け止めるようになったことが大きい。ベトナムはペットブームに沸いている。行政も犬を食べないように呼び掛けている。

 昨年、ハノイ市が犬肉を食べる習慣の見直しを呼び掛けたのに続き、商都ホーチミン市でも今年9月、自粛を呼び掛けた。ただ、犬食は伝統文化として根付いている。すぐになくなることはないだろうが、風当たりは激しくなる一方だ。

 犬食に厳しい目が向けられているのは、密輸・密猟問題も絡んでいるからだ。もともと食肉用の犬肉は、個人が育てた犬や野良犬を集めて、業者に引き取られる。中には、ペットなどを盗む密猟業者もいて、警察は摘発に力を注いでいる。また、タイなどからトラックで丸ごと運ばれてくることもある。

 かつては「食は広州にあり」とされた、中国広州市に近隣の国々から密輸されて行ったものだが、経済成長著しいベトナムもその受け手になってきたことに時代の変遷を感じる。

(T)