新作映画の中国語字幕で波紋


地球だより

 フィリピンでは中国人の観光客や労働者が急増し、その影響力が否が応にも拡大している。

 世界的に注目を集める新作映画の「アベンジャーズ・エンドゲーム」の公開に先立ち、一部の映画館が中国語字幕で上映すると発表し波紋を呼んでいる。

 フィリピンでは基本的に英語圏の映画は、字幕も吹き替えもなしでそのまま上映される。国民が英語ができることを前提に公開しているからで、国内の共通言語であるタガログ語の字幕は準備されない。にもかかわらず、中国人に対して字幕を用意するという異例の措置は、自国民を蔑(ないがし)ろにする「逆差別」と捉えられたようだ。

 前売り券を購入した一部の顧客からは、中国語の字幕で鑑賞したくないとして返金を求める動きも出ているほか、同映画館のボイコットを呼び掛けるネット上のコメントもあった。

 映画館側はこの騒ぎに対して声明を発表し、「最近、外国人が増えており、特に中国人の映画ファンからの高い需要があることに気付いた」と説明。商売上、中国人の顧客が無視できないほどに増えている実態が浮き彫りとなった。

 最近になりマニラ首都圏では、中国語の看板を掲げた飲食店などが急増するなど、仕事や観光でフィリピンを訪れる中国人は無視できない存在となりつつある。今回の字幕騒動では、フィリピン人の隠された中国人への複雑な心境が露呈する形となった。

(F)