米国のムチと中国の影響
地球だより
タイを訪れる中国人が昨年初めて1000万人を超えたように、マナー問題などさまざまな嫌中感情を植え付けながらも中国の影響は東南アジアで年々増してきている。
ところで、米国は現在、ミャンマーやラオス、カンボジアなど東南アジア諸国連合(ASEAN)3カ国に対し、ビザサンクションを実施している。
いずれも人権問題などを問題視した米国が、制裁措置として同3カ国の政府高官など、特殊な査証許可を制限しているものだ。
ただ、人権や民主主義の規範を普遍化するため、米国が強い鞭(むち)を振るうと、こうした価値観外交を排除した中国への傾斜を許すことになる問題があり、鞭の使い方に一工夫が求められる。
東南アジアの事情を配慮し過ぎると、民主主義の進展は阻害される一方、強い制裁は、これらの地域を中国に押しやる弊害が生じることから、長期的視点では歓迎されるものではない。
英米関係に見られるように、大西洋の両岸にはキリスト教を基盤とした文化的紐帯(ちゅうたい)がある一方で、太平洋の両岸はそうではない。
だからこそ、わが国は戦後、米国との関係を維持発展させるため、植木を育てるように雑草を抜き水遣(や)りを欠かすことがなかった。努力しなければ関係維持は、おぼつかなかったからだ。
戦後七十数年続けてきた日本のそうした蓄積を、東南アジアと米国との関係維持のために活(い)かす必要があるだろう。
(T)