支援物資にまで及ぶ政治腐敗


地球だより

 がんが疑われた健康問題が浮上して弱気になったのか、しばらく過激発言が減っていたドゥテルテ大統領だが、このほど地方の首長に対する怒りが爆発。再びドゥテルテ節が炸裂(さくれつ)した。

 フィリピンでも台風はじめ大きな災害が発生しているところだが、怒りの原因は、被災地域における政府の支援物資の配布に関するものだ。ドゥテルテ氏によると、支援物資を地方の首長を経由して配布すれば自身の支援者ばかりを優先し、対立候補の支援者を冷遇する傾向が強いという。

 来年の中間選挙に向けて候補者登録が行われるなど、徐々に熱を帯び始めている選挙戦を踏まえての発言だ。

 ドゥテルテ氏は「政府予算で購入した支援物資は中立的なもので、政治的に利用すべきではない」と、立場を利用する首長たちを断罪。今後は首長を経由せずに、政府が直接被災者に支援物資を配布するように関係者に命じた。

 実際のところ被災現場では、地方の政治家が自身の支援者を優先する程度は序の口だ。支援物資の箱の中身を品質の悪いものと入れ替えて、本物の支援物資を丸ごと懐に入れてしまったり、品物のパッケージを自分の名前入りのものに変えて政治キャンペーンに使ったり…。腐敗した政治家の悪知恵は底知れないと驚かされる。

 こんな基本的な道徳問題にまで大統領が口を出さなければならないほど、この国の政治腐敗は根深い。

(F)