ブタは中華圏で縁起物


地球だより

 2年前、台湾の総統選挙を取材した折、台北の蔡英文氏選挙事務所を訪問した。そこは人気女優のショールームのようでもあり、多くの支持者が訪問しては壁に激励の一文を書いたり、蔡英文氏をかたどった小物グッズを購入して選挙資金の足しにしていた。

 その小物の中に、蔡英文氏をモデライズした子ブタの貯金箱があって結構人気だったのが意外だった。

 中東などイスラム圏では、何でも食べてしまう悪食のブタは忌み嫌われており、汚れた存在として食することが禁止されているだけでなく、存在そのものが「悪」とされている感がある。西遊記の映画がマレーシアで上映された時、猿の孫悟空と河童(かっぱ)の沙悟浄、豚の猪八戒といった3人の家来のうち、猪八戒だけがポスターから外されるということが起きたほどだ。

 一方で中華圏では、旺盛な繁殖力を持つブタは縁起物として愛されている。蔡英文氏の子ブタの貯金箱も、そうした文化背景を持っている。

 なお、中国で最近発売された3匹の子ブタをかたどった切手が波紋を広げている。

 一人っ子政策から二人っ子政策に舵(かじ)を切った中国ながら、少子化傾向は止まる様相がなく、北京は次に「3人っ子」政策に出るのではという臆測を呼んでいるからだが、人口問題は政策一つで「トントン」拍子にはいかないところが悩ましいところだ。

(T)