「今年のウソ」はオバマケア
損なわれる医療制度
保険会社を支配する政府
【ワシントン】「ポリティファクト」によると、「今年のウソ」は、「今の医療保険がよければ、継続していい」だ。しかし「今年の話題」は、全米が革新的なオバマケアとはどういうものなのかに気付いてしまったことだ。オバマ政権は、とにかく法案を通過させるために、真っ赤なうそをつくしかなかったのだ。
オバマケアは、現在の制度を改良するだけであり、独立保険会社の間の競争は続くが、保険がもっと効率的で、公平で、余裕のあるものになるという触れ込みだった。サンドラ・フルークさんへの無料の避妊薬、無料の乳がん検診や健康診断、3000万人の無保険者への無料の保険や補助金。不思議なことに、政府予算は1セントも使われていない。
だが、オバマケアの実態は、連邦政府がすべてを管理することにある。「今の医療保険がよければ、継続していい」という言葉は、すでに保険があり、それが気に入っている何百万人もの人々に対する誘い文句だ。「心配はいらない。誰も困らない。何もかもこれまでと同じ」ということだ。
これは最初からペテンだった。医療保険改革法は、個人で加入している保険を解約させ、政府の運用する「保険市場」で契約させるためのものだ。保険市場に行けば、政府が決めた必要のない補償を買わされ、保険料は高くなる。ほかに回すための資金を捻出するためだ。無料のサービスは表向きだけだ。
このごまかしがばれ始めたのは、2013年の後半になって最初の解約通知が出されるようになってからだ。そして、誰もが実感するようになった。600万人の国民が、個人で加入していた保険を失った。それは始まりにすぎない。厚生省の試算によると、7500万人が、雇用主が加入させている保険を解約することになる。その中の中産階級労働者の何百万人かは保険市場に移るが、政府の補助金は受けられず、保険料、控除免責額、患者負担金は上がる。
それだけではない。医師の診断や薬も制限されるようになる。保険会社は、補償と「無料」サービスを拡大することが新法で義務付けられており、そのための巨額の費用を賄うために保険の適用を抑制するからだ。
しかし、医療保険で大変な目に遭うのは個人だけではない。新制度を支える保険会社も完全な変革を迫られる。急速に、連邦政府の一部のようになっている。
最近、こんなことが起きたばかりだ。厚生省が一方的に、通告もなく、保険加入の締め切り日やガイドラインを変更した。前日の12月31日に契約を交わしたものであっても、まだ保険料が支払われていなくても、1月1日に補償を開始するよう求めたのだ。さらに、移行期間中に医者にかかり、薬を買った場合、新保険でカバーしていなくても、解約された前の保険でカバーされていれば、補償するよう「強く推奨」した。
閣僚がどのような権限で、契約中にない補償に対して支払い、契約が成立していない顧客に補償を提供するよう民間企業に命じることができるのだろうか。誰も聞こうとすらしない。法律自体が、保険制度全体を運用、監督、管理する包括的な権限のようなものを厚生省に与えているのだ。
誰がリーダーかをはっきりさせたかったのだろうか、政府は20日、同じことを繰り返した。保険を解約された人は、低価格の「悲惨な」保険プランが買えるようにすることを宣言したのだ。不十分で基準以下だとして、オバマケアで禁止されているプランだ。さらに、同じ人々に対して、医療保険なしで済ませることができる特別な権利をも認めた。保険会社は、オバマケアの保険市場のリスク評価を損ねることになるとして直ちにこれを非難した。
私は3年前、オバマケアで、保険会社は公益事業会社のように政府の言いなりになると予想した。だがそれでもまだ足らなかった。今や保険会社は、政府の完全子会社だ。「強く推奨」という言葉を見てみよう。穏やかな説得だろうか。実際には、保険会社はこれを拒否することはできない。連邦政府というボスには、保険市場から保険会社を締め出す権限があり、怒らせるようなことはできない。
さらに、不利な決定を下され、健康な若者が減り、その代わりに費用の掛かる、病気がちな高齢者が増えたりして、経営悪化のスパイラルから逃れられなくなった場合、唯一の頼りは政府の救済だ。これでは、破産状態になった時の唯一の救いである政府を敵に回すようなことはできない。
保険会社の味方をしているわけではない。因果応報だ。この計画の作成でホワイトハウスに協力し、のみ込まれてしまった。気になるのは一般国民のことであり、有効で、発展した、選択可能な医療制度が失われることだ。
オバマケアは、英国流の単一支払者制度とは違う自由市場制度としての体裁をとっている。だから、議会審議でホワイトハウスはいわゆる「公的医療保険」をこれみよがしに拒否した。だがそんなことはどうでもいい。公的医療保険ではだめだ。連邦政府は現在、保険市場を運用し、保険の加入日、手続き、料金、リスク評価、補償要件を決めている。顧客に求められてもいない補償をカバーするよう保険会社に要求する、しかも法律で求めるのだから手に負えない。