中国が象の爆買い?
地球だより
ラオスで最初の統一国家となったのは650年前の「ランサーン」王国だ。ランサーンとは「100万頭の象」という意味で、ラオスはいわば「100万頭の象の国」でもあった。
事実、メコン河流域には野生の象が多く生息していた。また、象は仏教において神聖な動物とされ、敬虔(けいけん)な仏教徒であるラオスの人々に大事にされた。
無論、実務的なメリットも大きかった。戦時には敵を蹴散らす巨大な“戦車”であり、平時には森のブルドーザーとして木を引き倒したり運んだりした。
その象の仕事も、本物の戦車や重機、トラックに取って代わり、今では観光客の見世物として働くようになった。
「100万頭の象の国」ラオスの現在の象の生息数は750頭でしかない。保護したり飼育されている象が400頭、野生象が350頭というのが、ラオスの現実の象の個体数とされる。
とりわけ中国の爆買いパワーが、ラオスの象にも及んできている。
中国人バイヤーは、ラオス人の誇りにもなっている象をも標的にし、飼育中の象を手放させたり、野生象を違法に狩猟するなどして急速にその数を減らさせている。
象と家族同然に暮らしてきたラオス人ながら、飼うにしても1日に150キログラムの食糧を食べ、120リットルの水を飲む象の飼育には大変な負担を強いられる。中国人バイヤーは、その台所事情を見抜き、札束攻勢を掛けるのだ。
中国では国民の生活レベル向上に伴い、観光や興業ビジネスが成長している。このためサーカスや動物園などで、象の需要が増えているのだ。
今やラオスの象は100万どころか、世界保健機関(WHO)の絶滅危惧種(レッドブック)にも指定されるほどだ。
(T)