経済再建のカギは核放棄だ
米朝首脳会談に向けて韓半島周辺の動きが活発だ。東京での韓中日首脳会談に先駆けて、金正恩労働党委員長が専用機で中国・大連を訪れ習近平主席と最近、2度目の会談。ポンペオ米国務長官も急きょ平壌を訪れ、首脳会談の最終調整を行っている。
米朝首脳会談はドラマチックで歴史的な世紀の会談だと言われている。
ポンぺオ長官は中央情報局(CIA)長官だった3月末から4月初にかけて、トランプ大統領の特使として極秘訪朝し金委員長とも会談しており、今回が2度目の訪朝だ。
米朝の高位級会談は2000年10月、当時の金正日総書記の特使として趙明禄・国防委員会第1副委員長(人民軍総政治局長)が訪米しクリントン大統領と会談。同月、その答礼としてオルブライト国務長官が訪朝して金総書記と会談して以来だ。
当時、趙明禄副委員長は「北朝鮮の清津港を米国に提供する用意がある」と発言。また、07年には訪米した6者協議の北朝鮮代表、金桂冠外務次官も米側に「北朝鮮は中国より米国寄りになる意思がある」と語ったと言われている。
北朝鮮は中、露両国の間で国益を求める「二股外交路線」を取って来た。今度は中、露に米国を加えた「三つ股外交路線」を試みている。
中国が3月下旬に金委員長を北京に招待したのは、北朝鮮が米国寄りに傾くことへの恐れから、金委員長を国賓として待遇し中国寄りに引っ張ったと考える。中朝両国それぞれにニーズがあるとはいえ、むしろ、北朝鮮の二股外交路線が効力を発揮したのではないか。
一方、ポンペオ国務長官の3月末からの極秘訪朝の背景にも、伝統的に中国寄りの北朝鮮を米国寄りに取り込みたいとの思惑があると考える。北朝鮮がPVID(永久的かつ検証可能で、不可逆的な核廃棄)を受け入れる見返り(恐らく、経済再建への大規模な支援など)について具体的な提案があったのではないか。米国が北朝鮮を工業生産の拠点とするために支援を惜しまない場合、北朝鮮は高度経済成長を成し遂げる機会を得る。北朝鮮はまたとないチャンスを見逃してはならない。
米国は過去25年間、騙(だま)され続けた教訓から強硬な姿勢を崩さないはずだ。金委員長は生き延びるか、体制を崩壊させるか。政権の命運を左右する会談で核放棄に向けた第一歩を踏み出し、南北同伴成長に舵(かじ)を切ることを期待する。
(拓殖大学主任研究員・韓国統一振興院専任教授)





