預言者モーセの息遣い


地球だより

 4月中旬に、従兄弟(いとこ)の娘とその友人の女性ら4人が、エジプト観光にやって来た。クレオパトラの面影が残るアレクサンドリアや古王国時代のシンボル、ギザのピラミッドやスフィンクス、ヒエログリフの刻印が鮮やかな古代神殿が残るルクソール東岸や歴代の王が眠る王家の谷、アブシンベル神殿などを一通り見学したが、最も印象的な所はどこだったかと問うと、シナイ山との答えが返ってきた。

 シナイ山は、シナイ半島の南部中央にそびえる標高2285㍍の岩山。別名ホレブの山とも称され、約3600年前に預言者モーセが、40日の断食をして「十戒」を神から授かった山だ。山の麓に建てられたギリシャ正教会系修道院の中には、モーセが柴(しば)の燃えている所に引き寄せられて神に出会ったとされる場所もある。

 80歳のモーセが40日も断食して神から授かった十戒だが、麓で金の子牛を作って崇拝していたユダヤ民族を目前に憤慨し、それを投じて偶像を破壊。再度40日の断食をして十戒を得て、律法による初の統治を出発させるという、劇的な出来事があった場所でもある。

 一面広大な砂漠の中を200万人近い人々率いて進んだモーセ。マナとウズラが天から降らなければ到底一歩も進むこともできなかったに違いない当時の情景をほうふつさせられる。

 神に守られながらも、解放者として責任持って民を導こうとしたモーセの苦悩と息遣いが身近に感じさせられる旅は興奮の連続でもあった。

(S)