臨界点近づく対北軍事行動

高永喆氏

 北朝鮮は12月24日、国連安全保障理事会の追加制裁に賛成した国々、つまり欧米諸国はもとより中国とロシアに対しても恫喝まがいの警告を行った。これは自滅を招きかねない危険過ぎる冒険である。

 国際社会全体を敵に回す目的は、危機的な雰囲気を醸成して国内の結束を強化することだろう。また、最大限の経済制裁と軍事圧力が徐々に北朝鮮の首を絞めつける中、生活苦による国内の不平不満が爆発する危険性を事前に遮断する狙いもある。

 これだけを見ても、北朝鮮が核を手放さない目的が長期独裁政権の維持であることが分かる。しかし、体制維持のため核保有にこだわる北朝鮮は、逆に核への固執が体制崩壊を招きかねない危険性も抱えている。

 これまで米国は対北軍事行動のリハーサル訓練から戦争の指揮統制まで最終点検を行った。北爆開始の兆しを示す在韓米軍家族の避難訓練も年2回実施しており、マティス国防長官は「家族を直ちに撤収させる非常対応計画を持っている」と述べている。対北軍事行動の臨界点が近づいている証である。

 これは米朝戦争ではなく、圧倒的な最先端戦力を持つ米国が先頭に立って国際社会の危険人物である金正恩朝鮮労働党委員長の独裁体制と核兵器の脅威を取り除く平和維持作戦である。

 米国はなるべく血を流さないソフトランディングの決着を目指している。しかし、制裁による生活苦で不平不満が積み重なると、独裁体制崩壊の時限爆弾が動き始める可能性も出て来るだろう。同時に、米軍の北爆開始寸前のぎりぎりの段階まで追い込まれた北朝鮮が頭を下げて譲歩する可能性も出て来るはずだ。

 北朝鮮が金正恩体制を維持して生き残るためには、賢明な方向に舵を切るべき時期が来ている。北朝鮮体制を支えるエリート参謀グループも現状を十分把握しており、どの選択肢を取るべきか分かっているはずだ。

 双方が血を流さないソフトランディングの決着こそ望ましい選択肢である。

(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)