上に政策あれば、下に対策あり
地球だより
インドでは、世界で一般的なものがないことがある。ハンバーガーショップでは、牛肉も豚肉も使われず、専らチキンとフィッシュバーガーだけが売られている。
ヒンズー教徒は牛肉は食べないし、イスラム教徒は豚肉を食べないためだ。
また、ヒンズーもイスラムも基本的に酒はご法度だ。だから州によっては禁酒令のある所もある。こうしたこともあって、世界中の汽車旅で見られるビール片手に車窓を眺めるという光景が見られない。
だからといってインド人が酒を飲まないわけではない。よく見ると汽車旅ではセブンアップなど清涼飲料水のペットボトルがやたら目に付く。それも子供ではなく、大人が持っている。ただ、飲み方が異様で、ちびちび飲んでいる。ペットボトルの中身は清涼飲料水ではなく、蒸留酒に入れ替えているのだ。
なおインド最高裁は4月1日以降、国道や州道から原則500メートル以内での酒の販売を禁止した。飲酒運転による交通事故を抑制するためだ。昨年には高額紙幣の廃止という荒っぽい手立てをインド政府は断行した経緯があるが、今度も同様の強硬措置だった。
だが、「上に政策あれば、下に対策あり」というのは中国と同じだ。
一番多い対応策は、道路沿いの正門を閉じて裏口に客を誘導する方法だ。直線距離だとわずかだが、ぐるりと回って裏口まで500メートル以上になるという計算だ。
この方法が採れない場合には、敷地内にフェンスを使って迷路のような曲がりくねった細長い道を造り総距離が500メートルを超えるという新手も飛び出した。
(T)