目立つ社会人の大学受験


地球だより

 ブラジルにおいて、日本の大学の統一入試に当たるENEM(全国高等教育試験)の結果が出終わり、試験の点数に応じた入学正否の報告があちらこちらから聞こえるようになった。

 今回、高3の知人の娘さんが、ENEMの受験会場に行って驚いたのが、試験を受けている人々の年齢の幅広さだという。もちろん、高校卒業生が一番多いのだが、明らかに社会人とみられる人も少なくなかったというのだ。

 ブラジルは、一般的には若いうちに高等教育を受ける機会も先進国に比べれば少ない。裕福な家庭の子女が教育を受ける上で有利なことも間違いなく、大学入試も私学出身者が圧倒的な結果を出している。公立の進学校がほとんど存在しないことも教育格差を広げている一因だ。

 ただし、「人生の逆転」を狙うチャンスは残されている。ブラジルの国立大学は基本的に無料となっており、生活基盤を作り上げた高卒の社会人がステップアップを狙って大学を受けるわけだ。

 知人の日系人は、日本の出稼ぎから帰った後、35歳で国立大学の歯学部に合格、40歳を過ぎて自分の歯科医院を開業した。他にも40歳を過ぎて大学を卒業し、弁護士や国家公務員、教員になった人々もいる。

 もちろん、自身や家族の生活を支えるために勉学を志すことが難しい現実もある。それでも、家族の負担が非常に大きいだけでなく、自身も大きな借金を抱える可能性がある日本の大学制度を見るにつけ「再挑戦のシステム」を日本にも取り入れてほしいと思う。

(S)