沈静化した年越し花火


地球だより

 フィリピンで新年の風物詩と言えば、悪運を追い払う盛大な花火だが、今年はかなりおとなしくなった感じがした。

 確かに日本では考えられない数の花火が住宅街のあちこちから一斉に打ち上げられ、話し声も聞こえないほどの爆音となるのは変わりない。しかし以前のような「密度」と「しつこさ」がなくなったような気がした。例年ではしばらく窓を開けられないほどの煙が立ち込め、部屋の中まで硝煙の臭いが漂ってきたが、今年はそれほどでもなかった。それに夜中の2時ごろには、花火を打ち上げる連中もほとんどいなくなり、寝られないこともなかった。

 フィリピン保健省の発表によると、6日までに確認された花火による負傷者は630人で、昨年と比較して32%の減少だという。また国家警察によると、銃の発砲事件も89%減少。警察関係者は「ドゥテルテ効果」と指摘し、犯罪撲滅キャンペーンの結果であることを強調した。

 ドゥテルテ大統領は、ダバオ市長時代に導入した「花火禁令」を全国で展開する方針を示しており、保健省もこれを後押ししている。

 近い将来、フィリピンの風物詩が消えるかもしれないが、悪習との評判があるのも確かで、社会の成熟に従って消え行く運命なのかもしれない。日本でも除夜の鐘が騒音として扱われ、自粛する地域もあると聞く。あの騒がしい花火がなくなると、いささか寂しい感じもするが、これも時代の流れなのかもしれない。

 とはいえドゥテルテ効果と言うだけに、政権が変わった途端に元の木阿弥(もくあみ)となる可能性もありそうだ。

(F)