遺跡発掘の学者らに脱帽


地球だより

 8月下旬、エジプトの首都カイロの南約250㌔のミニヤ市郊外にある遺跡の発掘現場を視察した。未発表の遺物(ミイラや棺〈ひつぎ〉)などが発見され、正式発表までは緘口(かんこう)令が敷かれることからこの欄では詳細を述べかねるが、現場は灼熱(しゃくねつ)の太陽が照り付けるまさに灼熱地獄。

 小高い山の中腹に造られた神殿や墓、住居跡などの発掘現場を見て回る約2時間の視察で、喉はカラカラ。風で舞い上がる砂塵(さじん)や粉塵が口や目に入り、熱中症の一歩手前かと思うほどの危機的状況の中に置かれた。

 しかし、そんな中でも、ある40歳代とみられる若い学者らは、もう一段小高い場所に彫刻が施された部屋があると言って、手を取り、足を取り、お尻を持ち上げてくれて、貴重な部屋に案内してくれた。3000年前の芸術に出合う瞬間だ。

 天候以外に驚いたのは、教授たちの住む現場のみすぼらしさだ。現地の住宅か倉庫のようなものを改装した2階建ての住居は狭く、小さくて単純な構造のトイレがあり、食事は2階のベランダでしたが、屋根代わりに、蚊帳で作ったという日よけの布が頭上に渡してあるだけのもの。この一つ一つが、教授たちが工夫して作ったものだという。最近になってやっとお湯の出るシャワーが完成したそうだ。

 当日は、日本から3人の男性と1人の女性の学者・研究者がいて、案内してくれたが、灼熱の太陽の中で、現地の労働者を使いながら、自ら黙々と土を取り除き、遺構を浮き彫りにし、当時の食べ物など生活の実態などを調べる、気の遠くなるような作業の連続だ。遺跡発掘の学者・研究者らにまさに脱帽した。

(S)