「財団」通じ巧妙な資金集め
クリントン家復活へ
根深い電子メール問題
バーニー・サンダース氏は、ヒラリー・クリントン氏のスキャンダルの本質がまったく分かっていない。1回目の討論会でサンダース氏が、電子メール問題を軽く扱ったことはよく知られている。
この問題の核心にあるのは、機密情報ではない。マスコミが伝えたように、連邦捜査局(FBI)長官が、情報の管理が非常にいいかげんだとクリントン氏を非難したことでもない。
確かに重大な違法行為であり、十分に起訴の理由になり得る。クリントン氏は政治的な打撃を受けたが、法的に特別扱いされているという印象を与え、巧妙な責任回避と言い逃れで、真実を無視させられるところにいることが明らかになった。
しかし、それらは脇役にすぎない。本当の問題は、機密情報ではなく、そもそもクリントン氏がどうして個人サーバーを設置したかにある。その目的についてクリントン氏がうそをついているのは明らかだ。便利だからではない。隠すためだ。何を隠しているのだろうか。
これは、合法かどうかを常に意識し行動してきた人物の、被害妄想にすぎないのかもしれない。いずれにしても、サーバーを管理できれば、証拠を保存することも、破壊することも自由にできる。クリントン氏は実際に3万通の電子メールを消去した。
何を消去したのだろう。クリントン氏がサーバーを設置したのは、公職に就く前だ。何を守りたかったかは明らかだ。クリントン財団だ。
この財団は、慈善団体を装った巨大なファミリー企業だ。不明瞭で、巧妙に作られ、富裕層や支配層から資金を吸い上げて、クリントン株式会社に流す。設立の目的は、クリントン家のオフィス、旅行、施設などのライフスタイルを守り、利益になる人脈を確保し、世間からの評判を改善し、大勢の取り巻き、従業員を雇って現状を維持し、来るべきクリントン復活に備えることにある。
それでは、この組織がどのように運用されているかを見てみたい。2週間前に電子メールが少しずつ漏出し始めた。財団職員が国務省の担当職員に接触し、財団の「友人」に便宜を図るよう求めるメールだ。具体的に言うと、国務省のレバノンに関して「重要な地位にある人物」に会い、特に気前のいいレバノン系ナイジェリア人富豪との橋渡しを求めた。
クリントン擁護者らの反応は、大したものだ、下位のスタッフにすぎない、国務長官自身は関与していないなどというものだった。だが、その後もメールは公開され続け、財団が、国務長官自身と直接会うことを求めていたことが明らかになった。バーレーンの皇太子からもそのような要請があった。
確かに、第5艦隊の母港があるバーレーンはペルシャ湾の重要な同盟国だ。皇太子は、財団を通じて国務長官に会うべきではないが、バーレーン政府は財団に少なくとも5万㌦を寄付していた。これは重要なことだ。
さらに明らかになったメールから、国務長官と電話で話すか、直接会うことを認められた企業の半分以上が、財団に寄付していたことをAP通信が明らかにした。総額は1億5600万㌦に達する。
クリントン氏の反応はというと、寄付に対して便宜は図っていないというものだった。
そんなことがあり得るだろうか。ここが、まさに最後のとりでだ。接触し、影響力を及ぼすことに金が払われたのは確かだ。しかし、献金者が代わりに、具体的に価値のあるもの、つまり情報、許可、権利の放棄、有利な法律などを手にしたことを示す証拠はない。
クリントン家の人々が、こんな露骨なことを文書に残しておくような間抜けなことをするとは思えない。それでも、そのような会話をほのめかす電子メールがあった可能性はある。今後公開される数多くのメールに何が書かれているかは誰も知らない。
一目で分かるような形で、具体的な見返りという違法行為の明確な境界線が明示されることはないだろう。だが、違法とまではいかないケースはあり得る。実際に、資金を使って政治家に接近することはよくある。ドナルド・トランプ氏は、献金をしていた頃のことについてこう話している。「欲しいものがあると、…電話すれば、何とかしてくれる」。これが普通で、驚くようなことではないようだ。
ロレックスをしているのを見られるまでは、訴えられることはない。現金を受け取って上院議員を指名したことが分かっても駄目だ。ロッド・ブラゴジェビッチ氏はこれをやって禁錮14年の判決を受けた。
大統領は当たり前のように、大口献金者に快適な大使職を贈ったり、重要な委員会に任命したり、公式晩餐(ばんさん)会に招待したりしている。誰も驚きはしない。
明確な境界線は、すぐにそれと分かる賄賂のようだ。それ以下なら、クリントン家であれ、誰であれ、受け入れ可能な腐敗ということになる。
悲しい現実だが、ヒラリー・クリントン氏はこれに救われた。
(8月26日)