判事後任は共和党が決める
スカリア氏死亡で綱引
最終結論は11月の選挙次第
【ワシントン】アントニン・“ニノ”・スカリア判事の席を埋める最高裁での戦いについて見てみよう。これは露骨な権力争い以外の何物でもない。そこに高尚な原則を探そうとしても、絶対に無理だ。
ブッシュ前政権の7年目に、チャック・シューマー上院議員は、ブッシュ大統領の辞職前に最高裁判事の空席を埋めることに公然と異を唱えた。「例外的な状況が発生しない限り」などと言っていたが、そんなことは起きなかった。共和党は今、オバマ政権の8年目にこれとまったく同じことをしようとしているが、シューマー氏はこれを非難した。偽善というほかない。
民主党は、共和党は大統領に敬意を払うべきだという。選挙には結果が伴う。確かにオバマ氏は2012年に再選を勝ち取った。
共和党は14年の選挙で上院を奪取した。これが、国民の意思の反映であることは明らかだ。両者は、最高裁判事の指名で同等の権利を持つ。
7年間にわたってオバマ氏の憲法への冒涜(ぼうとく)を後押ししてきた党から、大統領に敬意を払えと言われても、そんな要求をのむのは困難だ。オバマ氏は、大統領令で移民法を書き換えた。裁判所はこれを支持した。規制強化でエネルギー経済を再編した。裁判所はこれも支持した。イラン核合意を成立させた。近年で最も重要な条約だが、必要なはずの議会の3分の2の支持を得ず、大統領の権限だと主張した。
民主党のリード院内総務は、上院がレームダック大統領の指名を拒否することは、前例に反すると反発している。ものは言いようだ。リード氏はほんの2年前、ほとんどの司法部門での高級職の大統領指名に対する議事妨害を廃することで、あらゆる前例を覆した。厳粛な憲法の原則の名のもとにリード氏は、議会で前例を破壊するために、核オプションと呼ばれるほど強力な策略を実施したのだろうか。そうではなかった。ワシントン連邦高裁で、オバマケアへの反対を確実につぶしてくれるリベラル派判事を増やすためだった。
オバマ氏は16日、イデオロギー、党派を超えて自身が指名する判事を承認するよう議会に堂々と求めた。今回の件と、06年に議事妨害を支持し、サミュエル・アリート氏の指名を阻止したこととの整合性について聞かれた時、オバマ氏は4分間も意味の分からないことをあれこれ言っただけだった。答えにはなっていない。ご都合主義の憲法原則、すなわち見え透いた偽善ということだ。
すでに言った通り、すべてが露骨な権力争いなのだ。民主党は権力を持ち、それを行使した。共和党は今、辞職していく大統領が最高裁のバランスを逆転させることは認められないと言っているが、まったく正当なことだ。今度の選挙で決めるべきことだ。状況が逆転しても民主党は同じことを主張すると思う人はおそらくいない。
そこで、共和党のミッチ・マコネル上院院内総務の出番だ。マコネル氏らは、「反エスタブリッシュメント候補」らやメディアから、議会多数派なのにオバマケアを破棄したり、家族計画連盟への資金を断ったり、大統領令を阻止したりしなかったではないかと非難されてきた。
14年の選挙について共和党は何と言っているだろう。勝ったが何も手に入れられなかった、「ワシントン・カルテル」の庇護(ひご)のもとにいる腐敗した指導部にだまされ、裏切られたと言っている。
実際、マディソニアン憲法のもとでは、野党は大統領の同意、または議会の3分の2以上の議席がなければ権力を行使できないが、大統領の同意が得られる見込みはなく、共和党は議席の3分の2を獲得していない。
だが、今それは関係ない。状況が違うからだ。最高裁判事の指名手順は主に2段階ある。大統領が提案し、上院が判断する。マコネル氏がこの手順を踏まない理由はない。それどころか、この手順を踏まなければならない。今回の指名には、1世代にわたった最高裁の傾向を大きく転換するかどうかが懸かっている。現在の上院にとって最も重要な懸案だ。
マコネル氏が勝てば、「14年の選挙で何が得られたのか」という疑問に明確な答えを出すことができる。現在の上院を支配しているのは民主党ではない。14年の選挙で勝利したことで、スカリア氏の席を守り、最高裁で保守派が多数である状態を維持することが可能になった。
しかし、それも今だけだ。オバマ氏の指名を阻止するには1年という時間が必要だ。最終的な結論は、11月の選挙次第だ。共和党が、民主候補に勝てない候補者や保守派でない候補者を選出すれば、マコネル氏の勝利は、一時的な執行停止でしかなくなる。
スカリア氏は12年に、もっと思想的にしっくりとくる大統領が就くまで引退しないと断言していた。「25年かけて取り組んできたすべてをすぐに無にしてしまうような人物とは交代したくない」
スカリア氏は、退任のタイミングを自身で決めることはできなかった。この30年間のレガシーの価値を決める人物が、スカリア氏の最後の願いが果たせるかどうかを決める。ここはマコネル氏に任せるしかない。11月に「ニノ」の後任を勝ち取るのは私たちだ。
(2月19日)






