無神経な当局対応


地球だより

 昨年11月13日にパリで起きた同時多発テロは、世界中に衝撃を与えた。芸術の都、グルメとモードの街パリは、平和を享受し、世界で最も外国人観光客を集める街として知られていた。そこで130人もの犠牲者を出す無差別テロが発生したことは、パリ市民やフランス国民にも大きなショックを与えた。

 多くのパリ市民は同じことを言っている。「もうかつての平和なパリには戻れない」「恐怖を感じない日はない」などだ。無論、実行犯がいまだに逃走中で、他にもパリでのテロ計画があると聞かされているわけだから、心配しないわけにはいかない。

 当局は最近、テロ発生時の対応が適切であったかを検討する委員会を立ち上げ、テロで生き残った被害者や犠牲者の家族に聞き取り調査を行った。その内容の多くは、対応に当たった当局への感謝よりも批判の方が多かったことから、対応を疑問視する声が上がっている。

 89人の犠牲者を出したバタクラン劇場で、ドアの陰から警察に通報した女性は「担当者は深刻に受け取ってくれなかった」「声が小さいので、もっと大きな声で話すように言われた」と語り、声を出せば確実にテロリストに発見され、自分だけでなく隠れていた全員が殺害されていたかもしれないと証言した。

 犠牲者の親族の女性は、遺体置き場に連れて行かれ、顔の判別もできない遺体の前で「手とか足で確認できるでしょ」と、無神経に言われ、胸が張り裂けそうだったと証言した。

 これまでも今回のテロ後、マスコミのインタビューで当局を批判する声は聞かれたが、正式な委員会の場での証言はインパクトがあった。委員会は当局の当事者からも聞き取りを行い、改善に努めたいとしているが、簡単に非は認めないだろうと言われている。

(M)