恐ろしい聖戦思想


地球だより

 過激派組織「イスラム国(IS)」は、ロシアの旅客機墜落事件と仏の首都パリでの同時多発テロ事件を起こしたとみられ、改めて世界中を震撼させた。

 エジプト人の「人懐っこさ」があだとなった空港の管理体制の甘さも指弾されたが、より根源的な原因は、ISを含む過激派組織が持つイスラム教の聖戦思想だろう。

 コーランやハディース(預言者の言行録)を神の言葉と信じ、章句を神の命令と信じる信仰を土台に、イスラム法によるイスラム国家・世界の創建のための“聖戦”を勝ち抜くためには、いかなる蛮行も正当化されるという思想だ。

 イスラム過激派が共有する、①預言者時代を理想とする②イスラム教の原点に立ち返り、コーランの厳密な解釈に従おうとする③テロや極刑、公開処刑、恐怖支配、性奴隷化、遺産破壊など、目に余る人権侵害を平気で行っている。

 それを放置するイスラム指導者にも責任があると言いたくなるが、彼らは「ISなどはイスラム教徒ではない」と公言、責任逃れに終始してきた。政治家も、イスラム教の票を得るために、また死刑宣告を受けたくないため、テロの現象だけを批判してきた。

 イスラム教では、一人ひとりが神に直結すべきだとして、神と人をつなぐ絶対的指導者の存在を認めていない。神に代わって偶像化されることを恐れているためだ。このことが、イスラム教徒を指導できないとする、言い逃れにも利用されている。

(S)