窮地に立つクリントン氏
サンダース氏は不適格
唯一の希望は共和の自滅
【ワシントン】ヒラリー・クリントン氏は起訴されなければ、民主党大統領候補に選出される。
有力大統領候補に関して、このように書かれたものはほとんど見掛けない。だが、代わりとなる第3の現実的な道も見えてこないが、あえて大胆な予測をしてみたい。
クリントン氏は、連邦捜査局(FBI)、議会、裁判所が進めている電子メールの調査で身動きが取れない。信頼は大きく損なわれている。ありのままを伝えるすべを知らないからだ。このようなことは過去にもあった。クリントン氏は3月に問題が発覚すると、「誰にも機密情報をメールで送っていない」と明言した。これが全くのうそだったことが明らかになった。ついには、情報機関の監察官が、メールに機密情報が含まれていることは間違いないとして、司法省に捜査を要請した。
クリントン氏は自衛のために後退してばかりだが、その中で頼みの綱は、機密の「印がつけられた」メールの取り扱いを誤っていなかったことだ。だが、ばかげている。クリントン氏が個人のメールサーバーで作成し、送ったメールに機密の印をつけるなど誰にもできないからだ。
機密文書や機密情報の扱いには慎重さが必要だ。例えば、外国の指導者との秘密の会合で得た情報は無条件に機密扱いとなる。国家安全保障に関わるものなら誰でも知っていることだ。ロイター通信は、クリントン氏が送ったメールの17本にこの「最初から機密」扱いの情報が含まれていたことをすでに把握している。国務省は、クリントン氏のサーバー上のメール188本に機密情報が含まれていたことをすでに確認している。
このような事実探しはまだ続く。それほど重要でない例としては、シドニー・ブルメソール氏とやりとりしたメールがある。クリントン氏はもともと、このメールは古い友人から「一方的に来た」にすぎないと主張してきた。だが、ニューヨーク・タイムズ紙のピーター・ベーカー氏によると、先週公開されたメールからは、これらのメールは要求したものであり、量も306通と非常に多い。国務省外とみられる人物とのメールとしては最も多い。
クリントン氏をめぐるスキャンダルはほかにもある。国務長官時代にクリントン基金への寄付をめぐる汚職に関与した可能性がある。公開されたメールで、この基金のことはあまり触れられていない。だが、クリントン氏が「仕事関係」でないとして3万2000通のメールを削除したことを考慮に入れなければならない。クリントン氏に「私用のメールと公用のメールを仕分ける際、クリントン基金に関連するメールは、仕事関係と見なされたのか、それとも私用と見なして削除したのか」と率直に聞いてみる必要がある。
明確な回答が得られることはないだろう。本当の答えは得られないのかもしれない。クリントン氏は意に介さず進み続ける。誰にも止められないのか。
そこにバーニー・サンダース氏が急速に台頭してきた。だが、指名獲得はあり得ない。まず、レーガン元大統領を上回る最高齢で就任式に臨む大統領となる。2期目の就任式には最高齢の大統領となる。
さらに自称社会主義者という問題もある。米国は、西側世界で最も社会主義に対する拒否感が強い。ためらっているジョー・バイデン氏に秋波が送られているのはそのためだ。
バイデン氏は72歳であり、高齢という点では同じだが、相応の同情票が集まっている。しかし、そんな同情も、選挙運動を始めればすぐに吹き飛んでしまう。今でも、キニピアックの最新の調査での支持はわずか18%だ。サンダース氏が離脱し、支持者をそっくり引き継ぐようなことがあれば、バイデン氏にも勝算が出てくる。
1968年にボビー・ケネディー氏が、ユージーン・マッカーシー氏の反リンドン・ジョンソン票を引き継いだ事例はあり、あり得ない話ではない。しかし、バイデン氏はボビー・ケネディー氏ではない。さらに、アイオワ州での最新の調査によると、バイデン氏への支持は、クリントン、サンダース両氏からほぼ同程度、来ている。反クリントン票を引き継ぐというより、分割することになる。
長い目で見れば、クリントン氏をしのぐ可能性はある。バイデン氏は、1期だけ任期を務めることを約束し、エリザベス・ウォレン氏を副大統領候補とする。1期だけという約束は、年齢の問題に対処するためだが、問題がある。短期の移行政権という印象を与えてしまうからだ。ウォレン氏の選出はこの問題に対処するためだ。民主党とサンダース氏の支持者に、12年間にわたるリベラル派支配が訪れるという期待を持たせることができる。
ウォレン氏は、バイデン氏とこの件について話し合ったかという質問に「長い話し合いだった」と答えた。否定はせず、あえて思わせぶりな態度を取った。
個人的には、バイデン・ウォレン組はないのではないかと思っている。だが、司法省の熱心な検察官とともに、クリントン氏の脅威であることは間違いない。
それがだめなら、民主党にはクリントン氏しかいない。唯一希望があるとすれば、共和党が党内紛争で自滅することだ。
(9月4日)






