イノシシ政治


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 秋の収穫期を迎えてイノシシ騒動が頻繁に起こっている。この“招かざる客”は農村、都市を問わずいつでも出没する。少し前には、病院に乱入して応急室を修羅場にした。田畑をめちゃくちゃにし、先祖の墳墓を暴く破倫も厭(いと)わない。その深刻さは、イノシシの被害を防ぐため墓地に人工芝を敷き、セメントで盛り土する奇想天外な事態が起こるほどだ。

 イノシシには昔もかなり頭を痛めたようだ。イノシシが増えて民の被害が大きいという記録が朝鮮王朝実録のあちこちに登場する。世宗(セジョン)(4代王)の時代には狩猟禁止令を解除してほしいという上書が上げられ、中宗(チュンジョン)(11代王)の時代には●(=叡の又をとったもの)宗(イェジョン)(8代王)の妃、章順王后(チャンスンワンフ)の陵が壊される事件が起こった。我慢できなくなった文宗(ムンジョン)(5代王)は地方に兵力を派遣して大々的な退治作戦を繰り広げたと伝えられている。

 イノシシの頭数はここ3年間に20倍にもなったという。トラやヒョウのような天敵がいなくなったのが主要因だ。イノシシは環境適応力に秀でている。雑食性なのでウサギ、野ネズミ、ヘビ、トウモロコシ、サツマイモなどを手当たり次第に餌にする。泥浴びを好み、小さな水たまりで寝転ぶ習性がある。性質は温順だが、興奮すると前後の見境なく突撃する。猪突猛進という言葉の由来がここにある。

 イノシシの習性は旧来の殻を脱ぎ捨てられない韓国の政治に似ている。政治家のみっともない姿は、国会の国政監査と予算審議が行われる秋の季節にぐっと頻繁になる。収穫期に頻繁に出没するイノシシと非常によく似ている。政治に付き物のあらゆる利権に介入する習性は、泥たまりで寝転び餌を選ばない“無法者”の習性にうり二つだ。政治家は個人的に会うと大概親切で学識も高い。平素には温順だが怒ると理性を失って攻撃的になる。イノシシの“猪突”性向そのままだ。

 イノシシ退治にはトラの排泄(はいせつ)物が効果的だという俗説がある。実際に試験してイノシシが逃げ出したという話が出回って、トラの糞(ふん)を頂けないかという問い合わせが動物園に殺到しているという。国政監査が終わるや否や、政界が第2ラウンドの政争に突入したという話が聞こえてくる。本当に前後の見境ない韓国の“イノシシ政治”には天敵も、特効薬もないようだ。国民はトラの糞でも国会に置いてきたい気持ちだ。

(11月4日付)