権限乱用するオバマ大統領

チャールズ・クラウトハマー米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー

国土安保省予算で対立

議事妨害に対抗する共和党

 【ワシントン】私は頭にきている。ハリー・リード氏とバラク・オバマ氏のせいだ。穏健、理性などさよならだ。憲法や手続き上の制約など気にしない。なりふりなど構っていられない。

 任期終盤に入ったオバマ大統領に怖いものはない。大統領の権限を意図的に乱用し、環境規制や移民などあらゆるものに関して、法律を独断で停止するなどして実績を残そうとしている。

 脇にやられた格好の共和党は、権力の分立への違反に対して哀れっぽく泣き言をいうばかりだ。だが、国土安全保障省への予算を止めることで抵抗できると思っていた。下院は、移民局以外の予算を承認した。これで、オバマ氏の移民への恩赦の大統領令執行の予算を止めることができる。

 しかし民主党は、上院で法案の審議を妨害した。法案は葬り去られる。そして、議事を妨害した民主党ではなく共和党が、国際テロの危険性が高まっているときに、国土安保省を閉鎖し、国家の安全を危険にさらしたと非難されることになる。

 完全に追い込まれた。だが、共和党がこの難局を脱する道はある。勇敢に、訴え続け、議事妨害を排することだ。法案を通し、大統領に送らなければならない。

 壊れた陶器を元に戻すことができないことは分かっている。議会はすでに、この壊れた陶器の山に膝まで埋まっている。政策に関して大統領は何度も、議会の権限を侵害してきた。何よりひどいのは、大統領令による不法移民への恩赦だ。オバマ氏は4年間、これは違法だと言ってきたはずだ。

 手続きには関してリード氏は2013年11月、なりふり構わず、大統領が指名する人事、最高裁以外の判事の指名に関して議事妨害を阻止した。これは、ワシントンの連邦高裁の判事をリベラル派ばかりにするためだった。全米のリベラル派が喜んだ。「投票すれば結果が出るべきだ」と言った解説記事もあった。「ボタンを押すべき時だ」ということだ。

 私がリード氏に不満を持っているのは、リード氏がしたことが原因ではなく、そのやり方が問題だからだ。議事妨害は、数十年間の間に、よく使われ、影響力も大きくなってきた。議会に機能障害を起こすほどまでになっている。すべて60票の賛成が必要だった。これは比較的最近のことであり、憲法のどこにもそんなことは書かれていない。

 問題は、リード氏のひどい規則変更のやり方だ。52対48という単純過半数で、共和党からは誰も賛成していなかったことだ。しかも民主党の3人が離反した。

 私は当時、「議席が少し多いというだけで、一つの機関を支配する基本的なルールを変えることができるのなら、ルールなど無用だ」と書いた。

 あの時のことを民主党は後悔することになると警告したのは私だけではなかった。一線を越えれば、誰かがまねをする。

 リード氏が最初に越えた。今度はマコネル上院院内総務がこの作業を行う番だ。議事妨害を阻止すべきだ。

 その後すぐに、下院の国土安保省法案が通過し、大統領に送られる。拒否権を行使するようだが、筋書きは大きく変わることになる。現在は、共和党は国土安保省の予算案に反対し、閉鎖に追い込むと警告するとなっている。新しい筋書きは、オバマ氏が予算案を拒否し、閉鎖に追い込むと警告するというものだ。

 後者は正確にいうと、民主党が国土安保省への予算を停止するということだ。さらに、大統領拒否権によってその責任はさらに大きくなる。だが非難されても、知らんふりをするのだろう。大統領は、面目を保つためにあらゆる手段に訴えることになるだろう。

 だが、議事妨害阻止の影響はすぐには消えない。今後の2年間に大きな影響を及ぼすことになる。これによって、共和党は議会の両院を支配し、共和党の法案を短時間で通すことができるようになる。

 敵対関係もはっきりする。無法者の大統領対頑固者の議会だ。共和党は、税制改革、貿易、オバマケアなど次から次に法案を大統領に送る。本気になれば、移民に関する法案も出せる。

 オバマ氏の選択肢は、署名するか、拒否するか、交渉で妥協案を探るかだ。拒否すれば、その問題を2016年の選挙で国民に問うことができる。

 不都合な点もある。民主党は13年に、一時的な利益のために進んで上院の手続きを変更した。一つの裁判所に3人の判事を送り込むためだった。民主党が議事妨害を完全に阻止しようとしても、今は共和党がその気になれば、止めることができる。

 いい点は、共和党がこの最終兵器を使えば、民主党が理性的になり、記事妨害の阻止など上院規則の重大な変更は今後、圧倒的多数の支持が必要だという新しい方針について協議するようになる可能性がある。それができれば、わずかな票差で、両党に真っ二つに分かれることはなくなる。

 これが理想的だろう。しかし、これは後の話だ。今はできることをしなければならない。議事妨害を阻止し、大統領に立ち向かわなければならない。「どうしてこんなことをするのか」と言われたら、リード氏に聞けと言えばいい。