16年大統領選へ地ならしを
民主大敗の中間選挙
国民の支持失ったオバマ氏
【ワシントン】共和党に言っておきたいことがある。4日の夜は素晴らしかった。だが、忘れてはならないことがある。勝ったのではなく、民主党が負けたのだ。
これは、選挙をオバマ大統領への信任投票とするという点で、共和党は効果的に行動できなかったという意味ではない。熟練した手腕で候補者を選択した。ジェンダーなどアイデンティティーポリティックスにとらわれることもなかった。
これによって共和党は、上院で恐らく9議席を獲得することになり、下院の議席数は過去最大となり、民主党の地盤であるマサチューセッツ州、メリーランド州、イリノイ州の知事選で大勝利を上げた。これは、選挙が共和党の土俵で行われたことが敗因だという民主党の言い訳がうそであることを示している。
民主党の敗北をエコノミスト誌は「マサカー(完敗)」と呼んだ。オバマ主義の完全崩壊であり、左派リベラリズムが拒否されたことを意味する。無能で政策を実行できず、結果的に支持を失った。米国政治史の中では小さな一コマとみなされることになろう。オバマ氏は選挙の翌日の記者会見できまり悪そうに否定したが、先月、この選挙を「これら(つまりオバマ氏)の政策のすべてについて賛否を問う選挙になる」と主張したのはオバマ氏自身だ。
オバマ氏の政治が拒否されたことは明白だ。しかし、民主党に対する否定であり、共和党への信任ではない。この勝利は、共和党にとって統治能力のあるところを示す絶好のチャンスであり、国家を導く権限を手に入れるチャンスだ。
私は5週間前、1994年の「アメリカとの契約」に似た構想を提示したが、これはすでに始まっている。それほど難しいことではない。多数派共和党の上院院内総務に就任するミッチ・マコネル氏とベイナー議長はすでに、日程を作り始めている。
迅速に、強力に進める必要がある。最初の10週間は、週に法案1本くらいのペースがいい。キーストーンXLパイプラインのような民主党の明確な支持を得られるところから始めればいい。
ハリー・リード氏が拒否した大統領貿易促進権限もある。この権限は、他の大統領と同様、オバマ氏も求めていた。共和党は法案を提出し、承認すべきだ。それをオバマ氏の手柄にし、協力姿勢と度量のあることを見せるべきだ。
次は、国外の米企業が保有している2兆㌦の資産を還流させることに焦点を絞った法案だ。液化天然ガスと原油の輸出を承認し、促進する法案もある。原油輸出は1975年に法律で禁止されたが、この法律はすでに時代遅れだ。国境管理の強化も必要だ。
オバマケアに関しては、廃止し勝利を印象付けることもいいが、オバマ氏が直ちに拒否するであろうし、無数の法案を矢継ぎ早に成立させ、個別に停止させることの方が重要だ。医療器具税、個人の加入義務の廃止、雇用者の従業員加入義務の廃止などだ。加入義務を廃止すれば、オバマ氏が果たしていない約束「医療保険が欲しければ、継続して保有できる」を実行できることになる。オバマケア保険市場に参加した保険会社の連邦政府による救済も廃止する。
オバマ氏が拒否すれば、それでもいい。民主党が、今後2年間はそれを支持する。
大きな一歩を踏み出すのはそれからだ。法人、個人両方に対する包括的税制改革を行い、税制の抜け穴をふさぎ、税率を下げる。歴史に残る1986年レーガン・オニール改革、オバマ氏が自ら廃止したシンプソン・ボールズ委員会がそのモデルだ。さらに、春までに税制改革法案を作成するために、民主党との直接交渉に持ち込む。
オバマ氏はどう対応するだろうか。選挙後の記者会見で示したように、不機嫌そうに拒否することだろう。また、大統領令による不法移民への恩赦で、政治の舞台を再び牛耳ろうとするだろう。
最後に共和党に言っておきたいことがある。弾劾という餌を見せれられても、食い付いてはいけない。財源を止めれば大統領令は骨抜きにできる。2017年にホワイトハウスを奪取すれば、直ちに撤回することを約束すべきだ。違憲であり、政策としてもよくないと非難すべきだ。しかし、そればかりにとらわれて、ほかの政策が影響を受けてはいけない。それこそがオバマ氏の望むところだ。これが、主導権を再び手にする唯一の方法だ。
この選挙で共和党は、過去にさかのぼって、党の信頼を回復するまたとないチャンスを手にした。民主党とマスコミは、連邦政府が機能していないのは「ノーの政党」のせいだとひっきりなしに訴え、そういう印象を国民に植え付けてきた。何もしないのは本当は民主党であることを暴露すべきだ。ハリー・リード氏はもう、下院を通過した法案を葬り去ることができないことを示せば、議会は効率よく動くことができる。
法案を通すことだ。オバマ氏が署名すれば、共和党が真剣であり、統治能力があることを示すことができる。拒否すれば、両党の間の考え方の違いを明確にでき、2016年に向けて地ならしができる。
今回の勝利は大きい。だが、何よりも大切なのは、舞台を整え、取り掛かることだ。
(11月7日)











