米中間選、共和党の勝利へ
混乱と無能の民主党
支持率低迷するオバマ氏
【ワシントン】今回の選挙は本当に争点がないのか。民主党はそう考えたがっているようだが、実は違う。
まず、どの選挙もそうだが、経済問題がある。過去2世代の間で景気回復が最も弱いことは、経済への対応に対するオバマ大統領への支持率が低いことを見れば分かる。
さらに、大統領は、格差の是正を政権の大きな目標の一つに掲げているが、格差はこの6年間で大幅に拡大した。政府の後押しを受けた株式市場でごく一握りの人々が大きな利益を上げる一方で、中間層の収入は減少した。
第2は能力の問題だ。政府は数々の災難を引き起こしてきた。オバマケアの開始、退役軍人局の不祥事、英雄視されてきたシークレットサービスの失態などがその好例だ。無能であるだけでなく、おせっかいで、腐敗している。安全保障当局による情報収集、政治的に気に入らない権利擁護団体を内国歳入庁(IRS)が意図的に狙ったことなどから分かる。
エボラ出血熱の問題は、国家への信頼が揺らいでいることを物語っている。安全を訴える一方で、対策の手順は何度も変更され、一貫性も欠いていた。陸軍が、西アフリカから帰還する兵士を隔離する一方で、ホワイトハウスは、帰還した医療従事者に対しまったく同じことをした州知事らを非難した。政府というものそのものの威信を損ね、オバマ政権も信用を失った。
オバマ氏は信頼を取り戻そうと、エボラ熱対策の責任者を任命したがまったく無意味だ。感染した一人の医師が、帰国後、ニューヨークの中心部を行き来していたことが明らかになって、危機が再発すると、責任者の姿は消えてしまった。恐らく、自分自身を隔離してしまったのだろう。
しかし、米国民の不安を高めている第3の要因がある。国防長官が微妙な言葉で、国外での米国の無力ぶりと混乱を「世界全体が爆発しそうだ」と表現した。
ほとんどの有権者は、ウクライナで起きていること、リビアの分裂、イスラム国の脅威がどこまで及んでいるかには興味を持っていない。だが、米国が弱くなっていることははっきりと感じ取っている。
ジェームズ・フォーリー、スティーブン・ソトロフ両氏の斬首の動画がこれに拍車を掛けた。残虐行為として多くの米国人が衝撃を受けただけでなく、力と決断力のない米国を過激派が蔑視していたからだ。オバマ氏はかつてイスラム国を「JVチーム(高校や大学のスポーツチームの二軍)」と言ったが、そのイスラム国が世界の超大国に対抗し、交戦の意思を示し、「米国は敗北するか、逃げる」といい放った。
オバマ氏がようやく空爆を命じ、イスラム国を「弱体化させ、最終的には破壊する」と約束した時、オバマ氏の支持率は上がった。しかし、ほぼ2カ月がたち、無計画で、やる気のない、その場しのぎの米国の対応がほとんど効果を上げていないことが明らかになった。60カ国の連合の姿は見えない。野蛮人らが門の近くにまで来ている。
米国の不手際は、米国の自信を喪失させただけではない。敵であるイスラム国を元気づけている。イスラム国は、ウサマ・ビンラディンが言った「強い馬」と見られ、参戦を志願する者を引き付けている。
これが選挙に影響を及ぼすのだろうか。イスラム国への政府の対応には広い範囲で不満が持たれているが、ほとんどの選挙で、主要な争点までにはなっていない。重要なのは、無力、混乱といった既に存在していた感覚が強められたということだ。
弱い経済、無能な政府と国家的威信の失墜、これらすべてが相まって、民主党候補者らの足かせになっている。民主党候補者らは、政府内にいる政党を代表しているだけでなく、政府の政党を代表しているからだ。
これが民主党にとって4日が不運な日となることをはっきりと示している。州ごとの調査では依然として、民主党の上院支配は困難という結果が出ている。
警告し投票に行かせるという手もある。いわゆる地上戦、つまり選挙の日に投票に行かせることで劣勢をカバーするということだ。これは世論調査では測定できない。あまり成功した例はないが、民主党は2012年に支持者(特に若者、女性、少数派)を見つけ出し、投票へと駆り出し、1、2ポイント稼ぐことができた。これによって、ほんのわずかの差が埋まり、支持率が誤差の範囲内という上院選を優勢に進めることができ、共和党が有利な選挙区を行き詰まりに追いやることができる可能性はある。
これはあり得る。しかし、このような地味な作戦の影響は大きくはない。いずれにしても、与党である民主党が混乱し、後退していることは明らかだ。
共和党勝利の舞台はすでに整っている。これほど政治的に有利な条件の下で勝てないのなら、転職を考えた方がいい。
(10月31日付)











