閉鎖は傲慢な民主党のせい 議会を無視するオバマ政権

チャールズ・クラウトハマー米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー

政府機関の再開を拒否

 【ワシントン】オバマケア・政府機関閉鎖をめぐる戦いは、無数の伝説を生み出した。その中で最もひどいのは、戦いの本質は何で、誰がその犯人で、どのような原因でこのようになってしまったのかという点に関してだ。

 (1)本質

 オバマ大統領は、オバマケアを廃止したり、修正したりしようとする共和党の試みは不適切だと強 主張している。「確立された」法律であり、両院を通過し、大統領の署名を得、最高裁にも認められているというのがその理由だ。

 確かに確立されていることは強い根拠となり得る。だが、成立後、政府が5回も一方的に修正したとなれば話は別だ。中でも見逃せないのは、雇用者への従業員保険加入義務付けを先送りしたことだ。

 憲法第1条は、立法権は議会のみが有するとしている。憲法をどのように解釈すれば、オバマ政権が一方的に法律を修正することができるのだろうか。下院が、憲法に照らして適切な議会手続きを経て、もう一つの義務である個人の保険加入義務を停止させようとしたときは、法の支配への憲法を逸脱した挑戦だと指摘された。行政府による一方的な修正がまったく問題なしで、一般の予算案に修正案を付帯させることがどうしてルール違反なのか。

 (2)犯人

 大手メディアは一様に、政府機関閉鎖は共和党のせいだと主張している。それを受けて下院共和党は、国立公園、退役軍人、ワシントン政府への資金供給を復活させるための3法案を提出した。民主党は全法案を否決した。手続き上の理由から、通過には3分の2の賛成が必要だった。

 リード上院院内総務(民主)は、資金供給の再開を検討すらしていない。ホワイトハウスは、大統領が拒否権を発動することを明らかにした。

 理由は明らかだ。痛みを長引かせ、共和党の責任とされる政府機関閉鎖を政治的に利用するためだ。民主党は、メディアが「共和党のせいで閉鎖されたイエローストーンのゲートの前で男の子が泣いています。詳しいことは後ほど」と報じると確信している。共和党がイエローストーンなどを閉鎖させないための法案を提出したことなどお構いなしだ。

 (3)原因

 この問題の根本的な原因として、手に負えないティーパーティーの無政府主義者らが至る所で槍玉に挙げられている。

 しかし、この因果連鎖はどこで終わるのだろうか。ティーパーティーが生まれた原因は、オバマ政権1期目の福祉政策、つまりオバマケアだ。現在のオバマケアへの激しい反対は、オバマケア成立の仕方に原因がある。

 社会保障から市民権、低所得者向け医療扶助(メディケイド)、高齢者・障害者向け医療保険(メディケア)まで、米国の現代史の中で、一党だけの賛成で成立したものは一つもない。常に、他党への必死の説得があり、それによって正当性のある、苦い年月にも耐え得る法律ができてきた。ところがオバマケアは、経済の6分の1を変革し、あらゆる医療行為を規制し、最終的にはほぼ全国民に影響を及ぼす大改革でありながら、共和党からの賛成票は一票も得ていない。

 民主党は、共和党からの意見も積極的に取り入れたと言う。これはうそだ。共和党は、保険はどの州でも買えるようにすることを提案した。だが実現していない。不正行為を防止する有効な改革案を求めた。これも実現していない。理由は、ハワード・ディーン元上院議員が認めたように、民主党が法廷弁護士を怒らせたくなかったからだ。

 明らかに政府は警告を受けていた。共和党のスコット・ブラウン前上院議員は、最も難しいとみられていたマサチューセッツ州で、オバマケア阻止を公約に出馬し、当選したのだ。オバマケアをめぐる議論が最高潮だった2010年1月のことだ。リード氏は、オバマケアへの広範囲の反対という明確なメッセージを無視し、ブラウン氏の裏をかくために、議会への働き掛けを行った。

 確かに違法ではない。野党からの一票の賛成票も得ずに法案を通すことは違法ではない。だが、大規模な社会改革は、超党派の多数の支持を得て実行するという現代米国の伝統に完全に反し、憲法の尊重という点でも問題がある。共和党と国家に無理にオバマケアを受け入れさせた付けを今、民主党が払っている。

 今の共和党の戦術に納得しているわけではない。資金供給の再開は不可能であり、ばかげていると思うからだ。それでも主張したいのなら、有権者の6分の5が反対する政府機関閉鎖ではなく、債務上限の設定にすべきだ。米国人の3分の2が、政府を制限する手段として支持している。

 戦術は戦術、本質は別だ。確立した法という概念を軽視したのは民主党だ。政府機関の重要な部分の再開を拒否したのも民主党だ。権力を独占していた短期間に改革を一方的に押し付けることで、真に小さな政府を求める運動、つまりティーパーティーを発生させたのも民主党だ。

 それももう終わりだ。現在の混乱は、あの民主党の思い上がりの産物だ。