真実を隠蔽したオバマ政権
米コラムニスト チャールズ・クラウトハマー
ベンガジ事件で特別委
共和党にも政治的リスク
【ワシントン】民主党は、ベンガジ米領事館襲撃事件に関する下院特別委員会が構成される前から、同委は党派主義の結実でしかないと主張してきた。公聴会をボイコットし、その正当性を失わせることも検討している。
そうなれば、オバマ寄りのメディアにベンガジを無視する根拠をさらに与えることになるが、そんなことは大したことではない。重要なのは、この委員会が新しい、重要な事実を作り出せるかどうかだ。そうなれば、無視はできなくなる。
たった一つの新しい証拠があれば、政府が揉(も)み消すことに成功したと思われている説を復活させることができることは、これまでにも見てきた。国家安全保障担当副補佐官、ベン・ローズ氏の電子メール「スーザン(ライス)との打ち合わせ」は、裁判所からの命令が出るまで8カ月間、公開されなかった。メールは、反イスラムのインターネット動画に焦点を合わせるようライス国連大使に求めているが、これは、ライス氏が5本のトーク番組で行った動画批判は情報機関からの情報に基づくものであり、選挙モード一色だったホワイトハウスからではないという、ホワイトハウスが繰り返してきた主張と食い違う。
特別委の委員長は、トレイ・ガウディ下院議員が務める。検事を16年務めたベテランだ。ガウディ氏は公聴会を適切に進め、真実を厳しく追求しなければならない。質問だけでいい。長たらしい演説は要らない。全共和党委員の発言はすべて、クエスチョンマークで終わらなければならない。ピリオドで終わる発言を共和党委員がした場合、委員長は直ちにボタンを押して、この約束違反の議員の席に電気を流すべきだ。
質問すべき内容ははっきりしている。前と中と後、この三つだ。
前-どこで、どの程度の職務怠慢が起き、メモ、緊急要請、危険を示す大量の証拠が無視され、米大使が死に追いやられたのか。
中-8時間のベンガジでの攻撃の間に何が起きたのか。殺害された4人の米国人のうちの最後の2人は、攻撃の最後に迫撃砲で殺された。最高司令官は何をしていたのだろうか。無責任な国務長官、ヒラリー・クリントン氏はどこにいたのだろうか。
このような重大な事件が起きたのにホワイトハウスは、極秘だとか重要でないからとごまかした。
オバマ大統領に関して、三つのポイントがある。東部時間午後5時、国防長官と統合参謀本部議長から攻撃について説明を受けた。
8時ごろ、オバマ氏は、ネタニヤフ・イスラエル首相と電話で1時間、話をし、オバマ氏がネタニヤフ氏を冷遇したという政治的に有害な報道に関して対応を検討した。ホワイトハウスは、両首脳が冷遇はなかったことで一致したと発表した。
つまり、ホワイトハウスは、ベンガジで事件が進行していた最中に、文字通りの選挙キャンペーン対策に追われていたということだ。クリス・スティーブンス大使の行方がまだ分からず、最後の2人の米国人が最後の砲撃で殺害される3時間前のことだ。オバマ氏はその夜、危機管理室にはいなかったことが分かっている。では、どこで、何をしていたのだろうか。
午後10時、オバマ氏はクリントン氏に電話し、最新情報を求めたことが分かっている。何が話され、決められ、命令されたのか。
元検察官のアンドリュー・マッカーシー氏が指摘したように、国務省は30分後、動画を非難する声明を発表した。動画を事件の言い訳にするためだ。グレン・ドハーティ氏が、タイロン・ウッズ氏がいた中央情報局(CIA)の施設の屋根に上がり、両者が殺害されるのはその直後だ。オバマ、クリントン両氏は、そんな時に隠蔽工作を進めていたということか。
これは推測だ。だから、事実を示してほしい。ホワイトハウスは、ウサマ・ビンラディン殺害をめぐるオバマ氏の活躍についてきちんと伝えた。しかし、ベンガジとなると、どこにも姿が見えない。このようなときこそ、大統領の本領発揮のしどころのはずだ。
後-ホワイトハウスが、政権の政策が非難されないよう、「動画が原因だ」と主張し、事実を覆い隠したことはもう分かっている。それを決めたのは誰か。アルカイダは「逃げている」という大統領のキャンペーンを守るためのものであったことは間違いない。
公聴会は共和党にとって大きな政治的リスクを伴う。2014年選挙を控え、オバマケア、経済、慢性的な失業などの大きな問題を選挙戦で利用することになるが、公聴会を開けば国民の関心はこれらから逸(そ)らされることになる。さらに、前回の公聴会のように失敗すれば、1998年のクリントン大統領弾劾手続きのように、共和党にとって裏目に出ることになる。党の利害だけを考えれば、これほどの政治的リスクを冒して公聴会を開く価値は共和党にはない。
しかし、国民には事実を知る権利がある。共和党が、公平に、事実に基づいて、公正に手続きを進めれば、それは可能だ。演説は要らない。パフォーマンスも要らない。ガウディ氏は厳しく規律を守ることが必要になる。特に、自党の党員らに対して自制を求めることが必要だ。