【上昇気流】梅は古くから日本人に愛されてきた


 梅は春を告げる花と言っていいだろう。冬の厳しさを越えて凛(りん)とした花を咲かせる梅は、古くから日本人に愛されてきた。春の花では桜と並んで代表的なものだが、桜と違って日本固有の花ではない。

 一説には、中国の唐時代に遣唐使がもたらしたもので、万葉集の時代、朝廷の官僚が梅の花見をして歌に詠んだことで知られている。

 人間以外の生物には国境が無く、渡り鳥は海を越えてやって来る。花も人々によって日本にもたらされて大地に根差し、代々花をつけて実を結ぶ。

 古代においては現在のように国境意識が強くなかったので、人々も朝鮮半島などから渡来して日本列島に住み着いた。四方を海に囲まれた島国の日本にとっては、海外の文化を取り入れる上で歓迎すべきものだった。また、先進文化を学ぶために遣唐使がたびたび派遣された。古代から現代まで俯瞰(ふかん)すると、こうした外からやって来るものは、日本の発展に寄与したと言っていい。

 最近、日本の生態系を破壊するものとして、バスなどの外来魚が注目され、駆除の対象になっている。これは外来魚の繁殖力の異常なほどの強さからくるものだが、それだけ固有種が絶滅の危機にさらされているからである。

 現代では国境は国家の死命を制するものとなっている。ロシアのウクライナ侵攻は決して許されない。明治天皇の御製「よもの海みなはらからと思ふ世になど波風のたちさわぐらむ」が浮かんでくる。