タイのポピュリスト政権の墓穴


地球だより

 タイ政府が農家からコメを市場よりも高値で買い取るコメ担保融資制度が危機的状況を迎えている。同制度はインラック政権の目玉政策の一つで、政権発足直後の2011年10月に導入されたものだ。

 反政府デモで総選挙に踏み切ったインラック政権が、選挙管理業務以外の決定を下せなくなる選挙管理内閣になったことで、コメ買い取りに必要な資金の手当てができなくなったからだ。

 コメ買い取り資金として政府が期待していたのが、政府間取引で中国に輸出するはずだったタイ産米120万㌧だった。だが、今月初旬には中国側の国営企業が契約破棄の意向を伝えてきた。まさに泣きっ面に蜂だ。

 支払いを受けられなくなったコメ農家はタイ各地で抗議活動を拡大。タイ中部のコメ農家などが幹線道路を封鎖した他、バンコク郊外の商務省前でも農民グループが道路封鎖に踏み切った。

 これまで最大野党の民主党のスティープ元副首相率いる反政府デモがバンコクで道路占拠のデモンストレーションを行ってきたが、ここにきて身内とみられた農民からも反旗が掲げられた格好だ。

 さらに同制度下、政府が市価の約4割高でコメを買い取ったことで、タイ産米は価格上昇で輸出量が激減。コメ輸出世界一の座も転落を余儀なくされた。農民票におもねたポピュリスト政権が墓穴を掘った格好だ。(T)