大国はワクチンで国際貢献をーネパールから
地球だより
ネパールでは、オリ首相が、5月10日の下院における不信任決議に伴い辞任した。
背景として、コロナの新規感染者数が4月に比べ60倍以上に増加し、特に辞任前日の9日からは、感染者数が連日8000人を超え、また死亡者が1週間で1000人を超えたことがある。
なお、感染拡大を抑えるのに肝心なワクチン接種の状況だが、5月17日時点で必要回数のワクチン接種を完了しているのは、約72万8000人で、人口の2・5%程度の低い水準である。
これに相まって、医療機器などの不足および国土の多くが標高の高い山岳地帯であることに加えて、酸素ボンベの補充が追い付かず、ある病院では集中治療室に入っていた5人が、酸素供給が切れたために死亡した事例も出ている。
不足するワクチンの製造に限らず、ネパールには自国産業があまりなく、多くの物を輸入に頼る状況を見ながら、自国内での産業の育成は、非常に重要であるということを再認識する思いだ。海外からの国際貢献にしても、さまざまな物資の支援も必要不可欠だ。
ワクチンなども大国が単なる外交手段として使用するのではなく、人道主義に基づいて善意の国際貢献を念頭に国益というものを超えて行うべきだろう。このコロナの災禍は貧しい国の為政者には弱り目に祟(たた)り目となって直撃する。国際社会に新たな協調関係が形成されることが願われる。
(T)