祭りは各家庭で
地球だより
イスラエルで8日からユダヤ教三大祭の一つである「過ぎ越しの祭り(ペサハ)」を迎えた。ユダヤ民族がエジプトでの400年間の奴隷生活を逃れ、カナンの地に出発した時を振り返るユダヤ教の重要な祭日だ。
例年であれば、家族や親戚、友人が一堂に集い、長テーブルを囲み「セデル」と呼ばれる夕食の儀式が行われる。しかし今年、新型コロナウイルスの感染防止対策で、約1週間の祭りを各家庭で祝うこととなった。
ウイルス感染防止措置として集会などが制限されていても、それらを無視し密(ひそ)かに集団で礼拝などを行う人々がいる。感染者の半数以上を占める超正統派ユダヤ教徒だ。政府は感染拡散防止の措置としてユダヤ教徒の移動を制限するため、祭りの前日からユダヤ人の都市やコミュニティー間の移動を禁じた。祭り初日の夜と最終日の夜は完全な外出禁止となった。
ユダヤ人たちはベランダに出て声を掛け合い、ロウソクを灯(とも)しセデルの歌を歌った。ユダヤ人の友人は、家のすぐ近所に両親や兄弟が住んでいるが、それぞれの家庭でセデルを行ったという。
一方で、市民に命じておきながら、国のトップが別に住む息子や娘と集いその夜を過ごしたとの報道があり、あきれる一幕もあった。
祭りの期間中、人影がなくなり閑散とした街々に現れたのは野生の動物たちだった。テルアビブの公園にはジャッカルの群れが出現し、ハイファでは路上をイノシシの親子が歩いていたという。
(M)