敬語は「おしゃれ」


地球だより

 最近、日本語を学んでいるある女性が口にした「敬語はおしゃれ」という言葉にとてもハッとさせられた。日本が大好きで、日本語の勉強にも意欲的に取り組んでいるのだが、日本語の中でも特に敬語に関心が向くというのだ。

 相手を尊敬し、こんなに丁寧で美しく、思いを込めた表現は英語やイタリア語などの他の言語には見られない。とても独特で、心のこもった表現だと気付いたのだという。

 「…していただけませんか」「どうぞお座りなさってください」など、彼女はそれらを「おしゃれ」と表現した。

 「おしゃれ」と聞いて、最初は「ちょっと感覚が違うのでは」と思ったのだが、「おしゃれと感じたが故に、おしゃれがしたいので、敬語をどんどん使いたい」と言って取り組む姿勢を見せられるにつれ、なるほど、本当に「敬語は外国人にとっておしゃれ」なのかもしれないと、思うようになった。

 彼女は、日本に行って、日本人の友人の家族にお土産を渡した時、「つまらないものですが」と言って渡したら、そんな言葉も知っているのととても驚かれ、親しみが増したように感じたという。そのような経験もあってか、敬語を知ることの利点や、感謝されることの快さを体験し、より敬語の素晴らしさにのめり込んでいるのかもしれない。

 改めて、敬語の素晴らしさに気付かされたのだが、敬語によって尊敬し合う関係が維持・発展し、交流や人間関係がスムーズにいくならこれほど素晴らしいことはない。日本の伝統文化の一つの極致を思い起こさせられたような気分になった。

(S)