停電で人生真っ暗?


地球だより

 国力の落差が大きい東南アジアでは、インフラ事情一つ取っても千差万別だ。経済成長で先行したシンガポールやタイでは、雷が落ちるとか避けがたい自然災害にでも遭遇しないと、停電はまずない。しかし、ミャンマーなどでは停電がしばしば発生する。

 ミャンマー北部のミッチーナで宿を取った時、深夜の停電で慌てたことがある。空は厚い雲に覆われ、それこそ漆喰(しっくい)のような闇にホテルは包まれた。多少の月明かりでもあれば廊下や壁など、かすかではあっても周囲が浮き上がってくるものだが、光が皆無だと天地左右が真っ黒で平衡感覚さえあやしくなる。用を足したかったが、皆目、方向の検討がつかない。

 バングラデシュでもそうした停電に遭遇したことがあるが、電力インフラが弱い国を旅する時、懐中電灯は必須アイテムだ。

 なお、ミャンマーのニュースをフォローしていたら、ネットカフェでプレーしていたeスポーツ界のミャンマー人スターが、勝利目前で突然の停電に遭遇して敗退するという記事を見つけた。

 電子機器を用いて行うコンピューターゲームなどのeスポーツは、先月開催された東南アジア競技大会で初めて正式競技に採用されており、ミャンマーでもブームになっている。だが、ミャンマーでの最大の敵は競争相手ではなく、停電かもしれない。

 いくら実力があっても、停電一つで画面は真っ暗。手にしたかもしれない賞金が飛ぶだけでなく、名声も傷つけられ人生も暗転しかねない。

(T)