絶品だったイエメン料理


地球だより

 イエメン料理が美味(おい)しいと語る邦人女性の案内を受け、カイロ市の中心、タハリール広場から2~3㌔の所にあるドッキのイエメン料理店に行ってみた。

 「内戦に苦しみ、貧困にあえぐ中東の最貧国イエメン」のイメージとは裏腹に、意外に豪華なレストランは広い1階だけでなく、2階にも小奇麗な大部屋があって、多くのテーブルが並んでいた。

 アラビア語に堪能な友人がてきぱきと注文、出てきた料理群の中でひときわ大きく目に飛び込んできたのが、特大のパンだ。直径70㌢ほどある円盤状に薄く焼き上げたパンを何枚も重ね、見るからに「大歓迎」の雰囲気を醸し出している。

 ウエーターはそれを四つ折りにして広げ直し、折り目をつけることで切り取りやすくしてテーブルに2皿、所狭しと置いて行った。とっさに手にしたパンに、ナスを主原料としたペーストを塗り、口にしたところパリパリ感としっとり感が混ざり合い、程よい香りとともに吸い込まれるような美味しさを味わった。一瞬、「これは、はまるぞ!」と思わされる魅力のある味だった。

 次にウエーターは、羊の肉を長時間煮込んだスープを一人一人の器に入れ、煮込まれた肉を一つ一つの皿に盛り上げた。スープの絶妙な味と盛り付けられた肉そのものの柔らかさは抜群で、とろけるような味わいが口の中に広がる。

 いよいよ柔らかな肉とライスを混ぜ合わせた主食がテーブルの中心に置かれた…。絶品を前に、今は最貧国というイエメンの国民の現状に改めて思いを馳(は)せた。

(S)