カーニバルとブラジルの微笑み


地球だより

 ブラジルは3月に入ると本格的なカーニバルシーズンを迎える。記者は、日本の知人から「本場のカーニバルやサッカーも楽しめるなんて、うらやましい」と言われることがある。

 確かに、サッカーやカーニバルファンにしてみれば、夢のような環境に住んでいるのは間違いない。どちらも世界有数の「本場」と言える舞台がそろっている。実際、目にすれば、華やかさや躍動など、その臨場感は魂を震わせるものがある。

 ただし、「サッカーもカーニバルも嫌いだ」というブラジル人も少なからずいる。知人の一人はカーニバルのシーズンになると、北や南のビーチに逃げるようにバカンスに向かう。

 「カーニバルの喧騒(けんそう)より、ビーチで海の音でも聞きながら仕事に疲れた体と神経を休める方がいい」。そういったブラジル人が一定数存在するのも確かなのだ。

 一方、日本にもカーニバルファンが高じて、ブラジルまでやって来る人たちが少なくない。ブラジルは、日本から来るには30時間程度はかかる場所。その熱意は「情熱の国」に住むブラジル人も驚くほどだ。

 何年も前の話になるが、サンパウロのカーニバル会場でブラジル人たちと一緒に踊る日本人の女性を見掛けた。周りのブラジル人からも惜しみない拍手を受けていたのが印象的だった。

 その女性のこぼれるような笑顔を見ながら、記者はなぜか「ブラジルの微笑(ほほえ)み」とでも言いたくなるような、ブラジル人が持つ屈託のない幸福感に包まれた笑顔を思い出した。

(S)