暑い国での冷たい関係
地球だより
ミャンマーの首都ヤンゴンで音楽学校をやっている知人が、最初にとまどったのはジョブホップするのが当たり前の国柄だ。
日本人だと少々のことは我慢して、将来に備えいろいろ準備する。だがこちらは、給料がなかなか上がらないとか、人間関係がまずくなるとパッと思い立ったように辞めていく。突然、降り出す雨季のスコールのようにだ。
しかも、「立つ鳥、後を濁さず」が日本型辞職の美学なら、こちらは「立つ鳥、泥を残す」というのも驚きだったという。
なかなかアップしない給料に嫌気がさして辞めたスタッフは、顧客のデータを全部消すという後ろ足で砂をかけるような嫌がらせをして出て行ったというのだ。バックアップはしていたが、直近のデータがなくなって不便を強いられたのは言うまでもない。
ミャンマーはモンゴルの襲撃を受けたり、隣国タイとの戦争を強いられたり、英国の植民地になったりして、永続的に連綿と続く王朝を持つことはなかった。そういった歴史の影響かどうか分からないが、しばしばミャンマー人はばっさり全部の関係を切って辞めていく。
日本人であれば、またどこかでつながるかもしれないと思って関係を大切にして辞めていく。だがミャンマー人はメールアドレスもフェイスブックも新アカウントを作って名前を変えてしまうというのだ。
(T)