閣僚は本来の職務果たせ
米コラムニスト マーク・ティーセン
国家安保チームを刷新
大統領補佐官にボルトン氏
トランプ大統領が、ジョン・ボルトン氏を国家安全保障担当大統領補佐官に、マイク・ポンペオ氏を国務長官に指名したことを受けて、批判の声が上がった。トランプ氏はもう、国家安保の意思決定プロセスに対して「大人の」監督はできない、トランプ氏の最悪の勘を閣僚は「チェック」できなくなるという批判だ。
このような見方は、侮辱的であるばかりか、反民主主義的だ。憲法は、大統領の権限に対するさまざまなチェック機能を規定している。議会、独立した司法、自由な言論などだ。だが、大統領の仕事を「チェック」するのは、閣僚の仕事ではない。決定を下すための選択肢を大統領に提供することが仕事であり、難しい選択肢を提示し、大統領を抑え込むことではない。
トランプ氏が国家安保チームを再編する理由の一つは、報道されている通り、選択肢が提示されないことに強い不満を持ったからだ。トランプ氏は昨年4月、イラン核合意の継続を渋々認めた。しかし、国家安保担当の補佐官らには、2度とこの合意を認めたくはないと話し、次の期限である昨年10月までに複数の選択肢を用意するよう指示した。これは実行されなかった。このような事態は容認できない。ウィークリー・スタンダード誌によるとトランプ氏は、合意破棄の選択肢が提示されなかったことに怒り、執務室での会議中にトム・コットン上院議員(共和)にスピーカーフォンで、すぐにでも支持が表明できる破棄の選択肢を提示するよう念を押した。
◇国防総省に不満
ニューヨーク・タイムズ紙の最近の報道では、トランプ氏は国防総省が、北朝鮮に対する軍事オプションを提示しないことに不満を募らせているという。同紙は、「(国防当局者らは)ホワイトハウスが朝鮮半島での軍事行動に走り、大惨事へとエスカレートするのではないかと懸念し、多くの選択肢を提示すれば、大統領が行動する可能性が高まると述べた」と報じている。残念ながら、これではわが国の民主主義は機能しない。軍へのシビリアンコントロールがあり、大統領は最高司令官だ。大統領が軍事オプションを望めば、それを実行するのが国防総省の仕事だ。国防総省の中にこのことを理解していない者がいることの方が、トランプ氏の気性がどうのと言う以上に、わが国の民主主義にとっては脅威だ。
ボルトン氏は、これらの問題を解決する決意だ。閣僚らは、自身の考えと合わない選択肢も大統領に提示し、アドバイスし、命令に敬意を払い、実行すべきだ。ボルトン氏はそれを本気でしようとしている。
ニュースサイト「アクシオス」によると、同氏は「公正な仲介者」となって、国家安保をめぐる決定について話し合うときは、すべての意見に耳を傾けるようにする意向だという。しかし、ボルトン氏は、閣僚に大統領の命令を実行させる「執行者」でもある。大統領が国防総省に、北朝鮮に対する軍事オプション作成するよう指示したり、イラン核合意でもっと気の利いた選択肢を出すよう求めたりしたとき、のらりくらりとしていることはもう許されない。これはいいことだ。
ボルトン氏は、米国を戦争に向かわせるつもりはない。これは確かだ。伝統的な力による平和を信奉する保守派であり、国務次官(武器管理・国際安全保障担当)、国連大使を歴任し、政治経験は豊富だ。官僚がいかにして選択肢を狭め、気に入らない政策決定を阻止するかについては、実体験として知っている。どうすれば、そうならないようにできるかも知っている。
◇大統領と強い絆
同じ理由から、レックス・ティラーソン氏をポンペオ氏と交代させることで、外交も強化される。ティラーソン長官の国務省では、長官は部下の話を聞かず、大統領は長官の話を聞かなかった。ポンペオ氏に代われば、このような事態はなくなる。中央情報局(CIA)長官として、トランプ氏に日常的にブリーフィングを行って、強い個人的なきずなを築いた。最高司令官の信頼を得、話を聞いてもらえる。それによって国務省の影響力は強まる。外交官らもその方がいいはずだ。
トランプ氏は、今後数カ月間、難しい選択を迫られる。北朝鮮に関しては、四半世紀にわたって共和、民主両党の大統領が問題を先送りにしてきたが、ようやく道が開けてきた。
トランプ氏は間もなく、二者択一を迫られる。北朝鮮に、米国に到達可能な核搭載大陸間弾道ミサイル(ICBM)の保有を認めるか、阻止するかの二択だ。誰もが、平和的な方法による後者を望んでいる。
そのために大統領は、封じ込めるべき相手は大統領ではなく、金正恩氏であることを理解している国家安保チームが必要だ。ボルトン、ポンペオ両氏によってようやく、そのためのチームができた。
(3月28日)






